帝国麦酒

帝国麦酒株式会社：幻のビール「サクラビール」の足跡

帝国麦酒株式会社は、1912年（大正元年）に鈴木商店と地元資本の協力のもと、福岡県に設立されたビールメーカーです。九州初の本格的なビールメーカーとして誕生し、「サクラビール」のブランド名で親しまれました。1929年以降は桜麦酒株式会社へと社名を変更しています。

鈴木商店の支援と躍進

設立当初から鈴木商店の強力なバックアップを受け、経営基盤を確立しました。鈴木商店の破綻という危機を乗り越え、一時は国内シェア第3位を誇るまでに成長を遂げました。

しかし、太平洋戦争中の1943年、戦時統制により大日本麦酒に統合され、31年の歴史に幕を閉じました。

工場跡地の今

本社工場は福岡県門司市大里町（現在の北九州市門司区大里本町）に置かれていました。戦後、大日本麦酒の解体に伴い、工場はサッポロビールの門司工場（後に九州工場）となり、2000年まで稼働を続けました。

現在、九州工場の跡地は「門司赤煉瓦プレイス」として整備され、往時の面影を残しています。特に、帝国麦酒本社事務所を転用した「門司麦酒煉瓦館」やビール工場棟であった「帝国麦酒醸造棟」は、貴重な産業遺産として保存されています。

サクラビールの復活

「サクラビール」は、1913年に発売され、鈴木商店を通じて世界中に輸出されました。その味わいは多くの人々に愛され、一時代を築きました。

工場の歴史を受け継いだサッポロビールは、2020年に当時の成分表を参考にアレンジを加えた「サッポロ サクラビール2020」を限定販売し、話題を呼びました。また、地元の門司港地ビール工房は、当時の味を再現した「サクラビール」を製造・販売しており、2020年には両社の「サクラビール」をセットにした商品が福岡県内で限定販売されました。

帝国麦酒株式会社は、短い期間ながらも日本のビール業界に大きな足跡を残しました。その歴史は、門司赤煉瓦プレイスやサクラビールの復活を通じて、今もなお語り継がれています。

関連情報
* 門司赤煉瓦プレイス

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