帰山教正

帰山教正（かえりやま のりまさ）

帰山教正（1893年3月1日 - 1964年11月6日）は、日本の映画理論家、映画監督、脚本家であり、日本映画史における重要な人物です。彼は、旧来の映画からの脱却を目指し、映画の芸術性を追求する「純映画劇運動」を提唱しました。

生涯

1893年、東京市麹町区（現在の東京都千代田区麹町）に生まれた帰山は、東京高等工業学校（現・東京工業大学）在学中から映画に強い関心を持ちました。彼は、映画雑誌『活動写真界』への寄稿を始め、1913年には日本初の映画評論誌『キネマ・レコード』を創刊し、映画批評の分野で活動を開始します。

1917年、天然色活動写真（天活）に入社。ここで、彼は映画理論書『活動写真劇の創作と撮影法』を刊行し、純映画劇運動を提唱します。この中で、彼は、舞台脚本から映画独自のシナリオへの移行、女優の起用、リアリズムの追求、撮影技法の改革、字幕の導入などを主張しました。帰山は、これらの理論を実践するため、自ら映画製作に乗り出します。

1919年、帰山は監督作品『生の輝き』と『深山の乙女』を発表。これらの作品は、新劇団「踏路社」の俳優や芸術座の花柳はるみを起用し、特に花柳は日本の映画女優第一号として注目を集めました。

1920年には、日本初の芸術映画プロダクションである映画藝術協會を設立し、『白菊物語』などの作品を製作。これらの活動は、松竹キネマや大正活映といった他の映画会社にも影響を与え、「新しい映画製作」の潮流を生み出しました。

しかし、関東大震災の影響もあり、映画藝術協會は1924年に製作活動を停止。帰山自身も、1926年の『少年鼓手』を最後に映画監督としての作品を発表する機会を失いました。

その後も、映画理論家としての活動は継続し、映画雑誌『国際映画新聞』への執筆や、映画におけるエロティシズムをテーマにした学術的研究書『映画の性的魅惑』を出版するなど、多岐にわたる活動を行いました。

1964年、帰山教正は71歳で死去。彼の功績は、没後の1964年12月1日に映画の日特別功労章、同年度の毎日映画コンクール特別賞として顕彰されました。

功績と影響

帰山教正は、日本映画の黎明期において、映画を単なる娯楽から芸術へと昇華させるために尽力しました。彼の提唱した純映画劇運動は、その後の日本映画の発展に大きな影響を与え、多くの映画監督や俳優に影響を与えました。日本映画の基礎を築いた先駆者として、その名は永く記憶されるでしょう。

日本初の映画評論誌『キネマ・レコード』創刊
純映画劇運動の提唱
女優の起用
映画芸術協会の設立

フィルモグラフィ（一部）

生の輝き（1919年）
深山の乙女（1919年）
白菊物語（1920年）
愛の骸（1921年）
少年鼓手（1926年）

著書

活動写真劇の創作と撮影法（1917年）
* 映画の性的魅惑（1928年）

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