大正活映

大正活映株式会社：横浜から生まれた日本の映画黎明期を彩った会社

大正活映株式会社（大活）は、大正時代（1912-1926）の横浜山下町に本社と撮影所を構え、日本の映画製作に貢献した会社です。1920年4月に設立され、わずか数年で製作を中止、1927年に解散という短い歴史でしたが、その活動は日本の映画界に大きな足跡を残しました。設立当初は「大正活動写真株式会社」という名称でしたが、後に「大正活映株式会社」と改称されました。

ハリウッドと日本の才能が出会う横浜

大活の設立は、浅野財閥の支援と、在日米人ベンジャミン・ブロツキーが支配人を務めていた「東洋フィルム」社の活動に深く関係しています。ブロツキーが1916年に建設した撮影所は、大活の拠点となり、ハリウッド出身の技術者たちが集まりました。この撮影所には、ハリウッド式の映画製作技術が導入され、日本の映画制作技術向上に貢献しました。

東洋フィルムは、ハリウッド俳優トーマス・栗原を招聘し、『成金』や『東洋の夢』（のちに『夢の旅路』と改題）を製作。これらの作品は、1919年にアメリカで販売され、日本でも大活によって配給されました。また、ブロツキーが撮影したドキュメンタリー『Beautiful Japan』は、『美しき日本』として大活から公開されました。

文豪と映画の融合：谷崎潤一郎と大活

大活は、文芸顧問に谷崎潤一郎を迎えました。谷崎潤一郎は、設立第一作である『アマチュア倶楽部』（1920年）の脚本を担当。この作品は、谷崎の妻の妹である葉山三千子を主演に迎え、多くの若き才能を映画界に送り出しました。 大活は劇映画だけでなく、ドキュメンタリー映画も製作し、アメリカ映画の輸入配給や映画館の経営も行うなど、多角的な事業を展開していました。

『アマチュア倶楽部』には、谷崎潤一郎の妻や娘も出演しており、当時の映画界における家族的な雰囲気を感じさせます。 また、後の大監督となる井上金太郎や内田吐夢、人気俳優となる岡田時彦なども大活に参加し、貴重な経験を積みました。

短命に終わった会社とその後

1922年、大活は松竹キネマに版権を譲渡し、映画製作を中止しました。その後は興行会社として存続しましたが、1927年に解散しました。わずか数年という短い活動期間でしたが、大活で経験を積んだ多くの人材が日本の映画界で活躍することになります。

撮影部、装置部、俳優部など、大活で培われた技術と人材は、小笠原プロダクション、映画芸術協会、マキノプロダクションなど、他の映画会社に散り散りになっていきました。 中でも、トーマス・栗原監督は、その後も映画製作を続けましたが、1926年に41歳の若さで病死しました。大活の取締役を務めた松方乙彦は、後に日活の社長に就任するなど、大活から巣立った人材は、日本の映画史に大きな功績を残しました。

大活のフィルモグラフィ：多様なジャンルの作品群

大活は、トーマス・栗原監督を中心に、谷崎潤一郎脚本による作品や、ドキュメンタリー映画など、多様なジャンルの作品を製作しました。これらの作品は、日本の映画黎明期における貴重な記録として、現在も研究されています。 代表作である『アマチュア倶楽部』をはじめ、『葛飾砂子』『蛇性の婬』など、谷崎潤一郎作品を基にした作品や、時代劇、ドキュメンタリーなど、幅広いジャンルにわたる作品群を残しています。

結語

大活は、短い活動期間ながらも、多くの才能を発掘し育成し、日本の映画界の発展に貢献した会社と言えるでしょう。ハリウッドの技術と日本の文化が融合した独特のスタイル、そして若き才能の育成という、大活の歴史は、日本の映画史における重要な一章として記憶されています。 その短い歴史の中で生み出された作品群は、日本の映画黎明期を知る上で貴重な資料であり続けています。

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