幌 (石狩市)

幌（ほろ）：石狩市浜益区の歴史と文化が息づく地

幌は、北海道石狩市浜益区に位置する地域です。集落は日本海に注ぐ幌川の河口に沿って形成され、その地名はアイヌ語に由来します。かつてニシン漁や果樹栽培で栄えた幌の歴史と文化について、詳しく見ていきましょう。

地名の由来：アイヌ語の響き

幌の地名は、当地を流れる幌川のアイヌ語名「ポロクンペッ（poro-kunpet）」に由来します。「ポロクンペッ」とは「大きい・クンベツ川」という意味で、隣接する群別地区を流れる群別川のアイヌ語名「ポンクンペッ（pon-kunpet）」（小さい・クンベツ川）と対になる名称でした。「クンペッ（kun-pet）」は、「小石・川」や「危ない・川」といった意味に解釈されています。

歴史：ニシン漁から果樹栽培へ

1796年（寛政8年）、場所請負人の伊達林右衛門（初代）がマシケ（増毛）とハママシケ（浜益）の両場所を取り仕切るようになり、夏季のナマコ漁のためにポロクンベツに漁番屋を建てました。1857年（安政4年）には、伊達林右衛門（3代目）が増毛山道を切り開く工事をポロクンベツから開始しています。

1871年（明治4年）、浜益を直轄地とした開拓使は、村落の名称を選定し、「ポロクンベツ」を「幌」と改称しました。そして、南隣の群別、北隣の床丹と合わせて群別村を構成するようになったのです。

1877年（明治10年）、開拓使は果樹栽培を奨励するため、浜益村にリンゴやサクランボなどの苗木を無償で交付しました。浜益村はこれらの苗木を近隣の希望者に配り分け、幌への配布が全体の54パーセントを占めました。当時の浜益では、ニシン漁の網元が果樹園を経営し、ヤン衆（出稼ぎ漁師）が漁のない時期に果樹園で働き、肥料には鰊粕が用いられていました。

1896年（明治29年）の調査によると、幌は浜益郡の首村である茂生に次ぐ繁栄の地であり、海浜には商店が連立し、巡査駐在所や寺院説教所などが設けられていました。

1913年（大正2年）にも、北海道庁から浜益にリンゴの苗木が交付され、この時も幌が全体の54パーセントを受け取りました。この頃には、幌には果樹の栽培を専業とする農家が現れていました。大正から昭和の初めにかけて浜益で盛んになった果樹栽培は、戦時下になると人手不足や食糧生産の優先により衰退していきましたが、幌では十数園が経営を続け、終戦後に再び果樹の需要が増加するまで命脈をつないだのです。

現在：果樹園が残る風景

2023年（令和5年）現在、幌には3戸の果樹園が残っています。浜益の中で幌だけ果樹栽培が続いた理由として、一帯が幌川によって形成された小規模な扇状地であることが挙げられます。「きむら果樹園」4代目の木村武彦氏は、「地面を掘ると石だらけ。水はけがよく、果樹栽培に適した場所だ」と語っています。

幌は、アイヌ語に由来する地名、ニシン漁や果樹栽培で栄えた歴史、そして現在も残る果樹園を通して、石狩市浜益区の豊かな文化を伝えています。

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