幡谷祐一

幡谷 祐一（はたや ゆういち）氏は、大正12年（1923年）10月6日に茨城県東茨城郡小川町（現在の小美玉市）で生を受け、平成30年（2018年）1月11日に94歳で生涯を閉じた、日本の著名な実業家です。

実業界でのキャリアは多岐にわたり、昭和30年（1955年）には茨城トヨペットを買収して社長に就任。その後、同社の取締役会長として長きにわたり経営を牽引しました。また、はたやモータープールやトヨタ部品茨城共販などの関連企業においても、取締役会長や実質的なオーナーとして幡谷グループを率いました。幡谷グループは、茨城県信用組合、茨城トヨペット、富士菱石油など、県内約27社で構成される一大企業グループへと成長しました。

特に地域金融界への貢献は顕著で、茨城県商工信用組合（後の茨城県信用組合）では、昭和41年（1966年）に理事に就任して以降、常務、専務、副理事長と昇進を重ね、昭和62年（1987年）には理事長に就任しました。理事長として四半世紀にわたりその手腕を発揮し、県内の信用組合を一つに統合する事業を推進するとともに、店舗数を84、預金量を1兆円規模に拡大させ、同信組を地域経済を支える主要な金融機関へと発展させました。その後、平成24年（2012年）には理事長を退任し、代表権を持つ会長に就任しました。全国信用協同組合連合会においても会長を務め、地域金融の発展に尽力しました。

公職・団体役職も数多く歴任し、茨城県中小企業団体中央会の名誉会長、茨城県信用組合協会会長、茨城県防衛協会会長、茨城県暴力追放センター理事長、茨城県安全運転管理者協議会会長など、県内の経済、防犯、交通安全といった多方面で指導的な役割を果たしました。また、茨城県行財政改革推進懇談会の会長や茨城県公安委員会の委員長も務め、県政運営にも深く関与しました。

学術的な探求心も非常に旺盛で、80歳を過ぎた平成19年（2007年）には筑波大学大学院に進学。平成22年（2010年）には、86歳にして生命環境科学研究科博士課程を修了し、『産学官共同のバイオディーゼル燃料プロジェクトの総合評価と技術的知見に関する研究』により博士（学術）の学位を取得しました。これは当時、全国最高齢での博士号取得として大きな注目を集めました。また、「ディーゼルエンジン搭載車両のバイオ燃料・軽油切替システム」に関する特許も取得するなど、晩年まで学びと研究への情熱を失いませんでした。

社会貢献活動も活発に行いました。自らが考案した座席の実用新案による資金を元に、昭和59年（1984年）に財団法人幡谷教育振興財団を設立し、理科教育の振興のために助成を行いました。文化活動にも熱心で、茨城県漢詩連盟の創立に関わり、自身も70歳を過ぎてから独自のスタイル「平成自由詩」を創作し、6冊の詩集を出版しました。さらに、宗教法人小幡山七福神神社の祭主も務めました。

政界とも深く関わり、参議院議員の岡田広氏や元茨城県知事の橋本昌氏など、多くの県内選出政治家の後援会長を務めるなど、地域における影響力は大きいものがありました。また、平成23年（2011年）には、後援会長を務めた元水戸市長の加藤浩一氏の提案により、東日本大震災で被災した宮城県石巻市のホタテ協業組合へ私費でフォークリフトを寄贈するなど、個人的な支援も行っています。

その多大な功績に対し、平成20年（2008年）に旭日中綬章、平成22年（2010年）に紺綬褒章を受章するなど、多くの栄典に輝きました。自治大臣表彰や暴力追放栄誉金章、交通栄誉章緑十字金章など、その功績は多方面に及びます。平成23年（2011年）には、存命中の人物として唯一、水戸市教育委員会発行の小中学生向け道徳副読本「まごころ」に、その半生が「終わらない挑戦」と題して掲載され、地域の子どもたちにその生き方が紹介されました。

父は茨城県信用組合の創業者で、県議会議員や町長を務めた幡谷仙三郎氏です。叔父には衆議院議員を務めた幡谷仙次郎氏がいます。子息も幡谷グループの各社で要職を務めるなど、その事業は一族によって引き継がれています。

経営者として長きにわたり第一線で活躍できた秘訣として、「夜の付き合いを一切しないこと」を挙げています。

平成30年（2018年）に老衰により逝去。その功績が称えられ、従五位が追贈されました。

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