幣原外交

幣原外交

幣原外交（しではらがいこう）は、日本の外交政策の一環として、1920年代から1930年代にかけて幣原喜重郎が推進した対中融和の外交を指します。この時期、幣原は内閣の外務大臣として、国際的な秩序を尊重しつつ、中国との関係改善を目指しました。

1. 幣原外交の背景と基本方針

第一次世界大戦後、国際社会はヴェルサイユ・ワシントン体制のもとで構築されました。この新しい世界秩序の中で、幣原は日本が列国（特にアメリカとイギリス）と協調すること、さらに中国に対して内政不干渉を貫くことを重視しました。これにより、日本の経済的利益を守ることを目指し、中国市場の拡大や満州における特殊権益の維持を図ったのです。

2. 幣原の外交活動

幣原は、1924年に加藤高明内閣の外相に就任しました。彼は就任演説で国際秩序を尊重する意向を示し、国際的な信頼を獲得するための外交政策を展開しました。例えば、1925年には中国が関税自主権を求める国際会議を提案した際、幣原はその開催に積極的に協力し、中国からの信頼を得ました。

また、同年に日ソ基本条約を締結し、ソビエト連邦との国交を正常化することにも成功しました。しかし、同時期に発生した万県事件や南京事件においては、内外の圧力を受けながらも慎重な対応が求められ、幣原は批判を浴びることになります。

3. 軍部との対立と外交の限界

幣原の外交は、軍部から「軟弱」との批判を受けました。特に、1927年の南京事件では、英米が武力で対抗する中、幣原は武力行使を回避し抗議にとどめたことが国内での反発を引き起こしました。しかし、彼は国際的な信用を大切にし、外交的解決を優先しました。

その後、1929年に濱口雄幸内閣で再び外相を務め、日華関税協定を結ぶなど、外交を推進しましたが、国内の情勢は次第に厳しくなり、満州事変の際には軍部の強い抵抗に直面します。幣原は「不拡大方針」を掲げるものの、結果的にその努力は失敗に終わり、彼の外交は終局を迎えました。

4. 幣原外交の評価と影響

幣原の外交は、国際的な場での日本の地位向上に貢献したとの評価がありますが、その一方で彼の譲歩が後の軍拡と対外侵略の道を開いてしまったとの批判もあります。特に、列国との関係構築のために日英同盟を廃止し、アメリカに屈服したことが、その後の国際関係への影響を及ぼしたとされています。

最後に、幣原がその後の戦争責任を問われることになるなど、彼の外交が日本の歴史に与えた影響は非常に大きかったと言えるでしょう。特に、戦後に首相として復帰した際には、長い間忘れ去られていた存在が再び注目を集めた事実は、幣原外交の意義を再認識させるものでした。

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