日華関税協定

日華関税協定の概要

日華関税協定（にっか かんぜいきょうてい）は、1930年5月6日に大日本帝国と中華民国の間で結ばれた協定であり、関税に関する重要な取り決めを含んでいます。本協定は、大日本帝国の重光葵在上海総領事と中華民国の宋子文財政部長の間で調印されました。この協定により、日本は中華民国の関税自主権を正式に承認しました。

背景

この協定が締結される背景には、1924年から始まった第一次北伐や1928年からの第二次北伐によって中国が統一されたことがあります。国民政府は「国権回収運動」を開始し、1928年には不平等条約の改正を宣言しました。この際、アメリカやイギリス、ドイツといった国々が中華民国における関税自主権を認める流れが生まれました。また、1929年には領事裁判権の撤廃が宣言され、その後アメリカとイギリスがこれを承認しました。

協定調印の経緯

日本側の政府もこのような国際情勢に応じて外交活動を進めました。田中義一内閣から濱口雄幸内閣に政権交代があり、幣原喜重郎が外相に任命されると、彼は国際的な協調を重視し、中国市場の安定を目指しました。アメリカやイギリスによる関税自主権の承認を受けて、日本も中華民国との間で同様の協定を結ぶ必要が生じました。

その結果、重光葵は交渉にあたり、1930年1月から協議が始まりました。そして、5月6日には日華関税協定が結ばれます。この協定では、日本の主要な輸出品である綿製品や水産物に対して、3年間の協定税率の拘束があるものの、中華民国の関税自主権が正式に承認されました。

協定後の日中関係

日華関税協定締結後も、中華民国は国内における不平等な利権の回収を積極的に進めました。この中には日本の直轄権益も含まれており、特に旅順や大連の租借権、満鉄などは重要な回収対象となりました。日本側では、関東軍の影響のもと特権的権益を守るため、武力行使をも視野に入れる意見が浮上しました。

こうした状況の中で、1931年9月に柳条湖事件（満洲事変）が勃発しました。これに対し、当時の日本政府は戦争の拡大を避ける方針を示しましたが、関東軍はそれを無視しました。一方で、中国は国際会議を通じた交渉を提案し、直接の対話を避ける姿勢を見せました。

幣原外相は、関東軍に対して自主的な撤兵を認めさせる一方、国際連盟の調査委員会受け入れを決定し、事態の沈静化を試みました。しかし、国内の強硬派からの非難もあり、最終的には彼の内閣は倒れました。こうして、幣原外交は終焉を迎えることとなります。

日華関税協定は、当時の国際情勢や日本の対中政策、またそれに伴う歴史的な出来事において極めて重要な意義を有しています。

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