干場一夫

干場一夫氏（1924年4月29日 - 2013年11月12日）は、北海道旭川市出身の元プロ野球選手です。主に投手として大阪タイガース（現在の阪神タイガース）に在籍しました。

干場氏は、地元の旧制北海道庁立旭川中学校（現在の北海道旭川東高等学校）を卒業後、社会人野球に進みました。日本製鐵輪西、そして旭川鉄道局でプレーを続け、その実力が認められてプロ野球界への道が開かれます。

1950年、大阪タイガースに入団。プロの世界に飛び込むと、すぐさまその才能を発揮しました。入団初年度から主力投手陣の一角として登板機会を得て、オーソドックスなアンダースローを武器に、このシーズンで10勝をマークし、チームの勝利に貢献しました。この時期の背番号は8でした。

翌1951年も先発陣の一員として期待を受けましたが、この年の勝利数は4に留まりました。そして1952年には肩の故障に見舞われ、残念ながらタイガースを退団することになりました。プロ野球選手としてのキャリアはわずか3年間という短い期間で幕を閉じましたが、その間に確かにプロの舞台で実績を残しています。

干場氏のプロ野球キャリアにおいて、特に歴史的なエピソードとして語り継がれているのが、彼が「偵察メンバー第1号」であるということです。これは、まだ予告先発制度が導入されていなかった時代に用いられた戦術の一つで、相手チームの先発投手が右投げか左投げかを確認するために、打順の上位に本来の出場選手とは異なる選手（主に投手）を一時的に入れ、相手先発が判明した時点で本来の野手と交代させるものです。

具体的には1950年4月22日、熊本市水前寺野球場で行われた対中日ドラゴンズ戦での出来事でした。この試合で、大阪タイガースの選手兼任監督を務めていた松木謙治郎氏は、前日に広島カープ戦で完投勝利を挙げたばかりだった干場投手を、投手でありながら「1番・レフト」としてスターティングメンバーに名を連ねるという異例の策を講じました。これは、中日の先発投手が左腕の清水秀雄氏か、右腕の服部受弘氏かで起用する打順や選手を調整したかったためです。

試合が始まり、中日の先発投手が右投げの服部氏であることが確認されると、1回表のタイガースの攻撃が開始される直前に、干場氏は打席に立つことも、守備に就くこともなく、左打者の金田正泰選手と交代しました。この一連の流れは、プロ野球の公式戦において、純粋に相手投手を偵察する目的でスターティングメンバーに起用され、打席や守備機会を与えられることなく交代した最初の事例として、日本のプロ野球史に記録されています。

プロ野球引退後の生活については公にされている情報が少ないですが、干場氏は2013年11月12日に89歳で亡くなられました。短い現役生活の中で見せた投球と、プロ野球の戦術史に名を刻んだ「偵察メンバー第1号」として、干場一夫氏の名前は記憶されるべきでしょう。

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