平井美奈子

平井美奈子（ひらい みなこ）

平井美奈子（1902年3月31日 - 2004年3月3日）は、日本の声楽家（ソプラノ）、歌手、童謡歌手、音楽教育者として、20世紀初頭から戦後にかけて幅広い分野で活躍しました。旧姓は早川。

生涯

実業家・早川鉄冶の娘として東京に生まれ、幼少期から音楽に親しみました。6歳より山田流箏曲を学び、1919年に青山女学院を卒業。その後、東京音楽学校（現東京藝術大学音楽学部）に進学し、ハンカ・シェルデルップ・ペツォルトとマルガレーテ・ネトケ＝レーヴェに師事して声楽を本格的に学びました。1923年に同校本科声楽部を卒業、1925年には研究科声楽部を修了しています。

1927年、日本初のプロ合唱団「ヴォーカル・フォア合唱団」の創立メンバーとして参加し、ソプラノ歌手として活動を始めました。ヴォーカル・フォアでは、オペラの研究や上演に力を入れ、ヴェルディの『椿姫』、マスカーニの『カヴァレリア・ルスティカーナ』などを自主公演しました。また、1936年にはフォーレの『鎮魂彌撒曲』の日本初演にもソプラノ歌手として参加しています。

1929年には法政大学音楽部創立メンバーでヴァイオリニストの平井誠と結婚。演奏活動としては、1929年に日本青年館で行われた東京帝国大学経友会創立十周年記念演奏会でシベリウスの『秋の夕べ』を歌唱、1930年には武蔵野音楽学校創立一周年記念大音楽会で四重唱を披露しています。また、1931年には法政大学航空部訪欧飛行出発式にて独唱を務めるなど、その才能を発揮しました。

平井美奈子は、童謡歌手としても活躍しました。1927年には「ケンケン小雉」など数多くの童謡をレコードに吹き込み、その優しい歌声で多くの子供たちを魅了しました。また、戦前には多くのレコードをリリースし、その歌声は多くの人々に親しまれました。

教育者としては、中央音楽学校で声楽教師を務め、蔡奎燁（別名：長谷川一郎、佐伯周二）らを指導。戦後は、東京女子高等師範学校（現：お茶の水女子大学）教授、上野学園大学教授を歴任し、後進の育成に尽力しました。1966年には、音楽教育者の福田靖子らと「東京音楽研究会」を結成し、音楽文化の発展に貢献しました。

1974年、長年の功績が認められ、勲三等瑞宝章を受章。2004年3月3日、101歳で永眠しました。

音楽活動

声楽家として

ヴォーカル・フォア合唱団の中心メンバーとして、オペラや合唱曲の演奏活動を展開。
フォーレ「鎮魂彌撒曲」日本初演に参加するなど、幅広いレパートリーを誇った。
藤原歌劇団や山田耕筰のオペラにも出演するなど、戦前のオペラ界で重要な役割を担った。

童謡歌手として

「ケンケン小雉」などの童謡を多数録音し、子供たちに親しまれた。
レコードを通じて、美しい歌声を広く伝えた。

教育者として

中央音楽学校、東京女子高等師範学校、上野学園大学で教鞭を執り、多くの音楽家を育成した。
東京音楽研究会を設立し、音楽文化の発展に貢献した。

親族

夫：平井誠（ヴァイオリニスト、法政大学卒業）

著書

『楽聖物語』（実業之日本社、1939年）

主な録音

ロッシーニ『セヴィリアの理髪師』イタリア語歌唱（1924年）
童謡「ケンケン小雉」（1927年）
童謡「お月さんと遊ぼう」（1927年）
映画主題歌「有憂華の唄」（1931年）
「夢見る丘の鈴蘭」（1931年）
「土を打てば」（1931年）
「母」（1931年）
「一粒の麦」（1931年）
「近代結婚風景」（1931年）
「夫婦愛の唄」（1931年）
「子守唄」（1931年）
「うたせ船」（1931年）
「海の行進曲」（1931年）
「火の翼」（1931年）
「幸の角笛」（1931年）
「四季頌歌」（1931年）
「鉄の花輪」（1931年）
「秋のみのり」（1931年）
「蒙古の唄」（1933年）

放送

国民歌謡「白すみれ」（1937年）

脚注

参考文献

「平井 美奈子」『日本ラヂオ総覧』 後巻 (A)、ラヂオ協会、1929年、84頁。

平井美奈子は、その卓越した歌唱力と音楽への情熱で、日本の音楽界に大きな足跡を残しました。彼女の歌声と活動は、後世に語り継がれることでしょう。

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