平原配水池

呉市平原配水池

広島県呉市に所在する平原配水池は、呉市上下水道局が管理する重要な配水施設です。その歴史は古く、大正時代に呉市上水道が創設された際の基幹施設であった平原浄水場に端を発します。

施設の変遷と現状

平原浄水場は1918年（大正7年）4月に通水を開始しました。長年の運用を経て施設の老朽化が進んだため、2013年（平成25年）3月をもって浄水機能は停止され、これまでの配水池の運用も終了しました。そして新たに配水に特化した施設として再整備されることとなりました。かつて使用されていた旧配水池は、その歴史的価値が認められ、「呉市水道局平原浄水場低区配水池」として国の登録有形文化財に登録されています。

現在、平原配水池には宮原浄水場で浄化処理された上水が送られ、主に呉市の中心部から北方面に位置する市民への給水を担っています。

文化財としての旧配水池

国の登録有形文化財である旧低区配水池は、半地下式の構造で、煉瓦とコンクリートを組み合わせた堅牢な造りとなっています。東西に二つの池が並んで配置されており、それぞれの池の規模は37.3m×71.5mです。この二つの池の間にある管理用通路の南北両端には、全国的にも珍しい煉瓦造りの換気塔が設けられており、意匠的にも技術的にも貴重な構造物です。旧配水池の標高は約86メートルに位置し、かつては6,000m3の配水能力を有していました。

かつて平原浄水場を含む一帯は、桜の名所としても知られ、一般に開放されていましたが、現在は保安上の理由から立ち入りが制限されています。

呉市水道の歴史と平原浄水場

呉市における近代水道の整備は、明治時代にさかのぼります。1886年（明治19年）に海軍区が定められ呉鎮守府が設置されると、呉港は軍港として急速に整備され、それに伴い人口も飛躍的に増加しました。この発展の中で、市民からは生活用水としての安全な上水道の整備を求める声が高まりました。

当時、呉には1890年（明治23年）から通水していた大日本帝国海軍の軍用水道「呉鎮守府水道」が存在しましたが、これはあくまで海軍専用であり、一般市民には供給されていませんでした。日露戦争後のさらなる人口増加は、衛生面および防火面での問題を深刻化させ、呉市は上水道の必要性を痛感します。海軍側も、市の環境悪化が士気に影響することを懸念し、市の上水道整備に理解を示しました。

1904年（明治37年）、呉市議会は上水道布設を決議し、技術者を招集して調査を開始しました。しかし、呉市の中心部を流れる二河川の水源は既に呉鎮守府水道が取水しており、市水道として新たな水源を確保することは困難であり、また市の財政も逼迫していました。

ちょうどその頃、海軍は本庄ダムの建設を含む呉鎮守府水道の第3期拡張工事を進めており、1911年（明治44年）7月、呉市は海軍に対し、本庄水源地からの余剰水の分与を陳情しました。この陳情が1913年（大正2年）3月に許諾されたことで、呉市は具体的な水道布設計画の実施設計に着手し、同年8月には市議会で計画案が可決されました。ただし、この水源利用に際し、二河水源地からの取水によって生じていた灌漑用水不足に関する地域住民への農作物補償交渉を、海軍から呉市が引き継ぐこととなりました。

平原浄水場の建設工事は1915年（大正4年）7月12日に現地で行われた地鎮祭を皮切りに着工され、1918年（大正7年）3月に竣工しました。そして同年4月1日、待望の通水が開始されました。当初予定されていた竣工式は市内で伝染病が発生したために中止されましたが、翌1919年（大正8年）4月22日の海軍鎮守府開設30周年記念祝賀会に合わせ、翌4月23日に改めて竣工式が執り行われました。この呉市上水道は、近代水道としては全国で34番目の開設にあたります。総工事費は約124万円で、国庫補助、県費補助、募債、市費、雑収入など多様な財源によって賄われました。

その後、呉軍港の拡大や周辺市町村との合併により、市の上水需要は増加の一途をたどりました。これに対応するため、呉市水道は拡張工事を重ねていきます。特に第2期拡張工事では、市水道として初の自己水源である三永水源地が開発され、1943年（昭和18年）2月6日には三永水源地から平原浄水場への通水式が行われています。

1945年（昭和20年）、呉は[呉軍港空襲]]をはじめとする市街地の空襲により甚大な被害を受け、さらに同年9月には枕崎台風が襲来し、水道施設も壊滅的な状態に陥りました。しかし終戦後、呉に常駐することとなった[[イギリス連邦占領軍]からの水道復旧命令を受け、市職員に加えて旧海軍関係者の応援を得ながら、復旧作業が急ピッチで進められました。同年10月6日にはまずBCOFが必要とする浄水の確保が実現し、その後市民向けの上水道も順次復旧していきました。

戦後の1950年（昭和25年）に旧軍港市転換法が施行されると、これに伴い、1954年（昭和29年）12月までに旧呉鎮守府水道の施設は国から呉市へ移管されました。これにより、呉市は旧海軍の強固な水道施設を市水道網に取り込み、拡張工事を通じて施設の一体化を図るとともに、平原浄水場もその機能を拡充させていきました。

時代の流れとともに施設の老朽化が進み、呉市水道局の施設は順次更新されることとなりました。その過程で、平原浄水場はその役割を終え、2013年（平成25年）に廃止されました。旧配水池は、歴史的建造物として文化財に指定され、保存・活用される方針となり、これに並行して新しい配水池が建設されたのです。

交通アクセス

平原配水池付近へは、広電バスを利用し「平原水源池前」バス停で下車するのが便利です。

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