平和相互銀行事件

平和相互銀行事件の概要

1986年に発覚した平和相互銀行事件は、日本の金融業界における重大な不正経理事件です。この事件は、平和相互銀行の創業者、小宮山英蔵が仕掛けた公私混同の経営スタイルと、彼の死後に起きた権力争いが引き金となりました。

平和相互銀行の成り立ち

平和相互銀行は、小宮山英蔵が1970年代に設立した金融機関で、当初は飲食店や水商売向けにサービスを提供し、急成長を遂げました。店舗数はピーク時に103店、資金量は1兆1500億円に達し、相互銀行の中では第6位の規模を誇っていました。しかし、その陰でファミリー企業への融資が横行し、なんと6000億円以上がグループ企業へ流れていったのです。

内部の権力闘争

英蔵の死後、子息である英一と弟の精一、女婿の池田らの間で激しい内部闘争が展開されました。この争いに介入した伊坂重昭が権力を掌握し、平和相互銀行の実権を握ることになりますが、その後、特別背任罪で逮捕される運命を辿ります。伊坂は最高裁で懲役刑を受けましたが、病気により死去するまで多くの混乱を引き起こしました。

不正経理の実態

平和相互銀行では、経営不振に陥った関連会社、太平洋クラブの資産を売却して償還資金を得る計画が立てられました。しかし、42億円相当の山林が60億円で売却され、平和相互銀行は116億円を融資するという不正が行われました。この大型融資は多くの不良債権を生み出し、銀行経営を圧迫しました。このお金の大部分は、闇社会に流れているとも指摘されています。

政界との癒着

1983年には、無人島馬毛島の土地を防衛庁に売却する計画が持ち上がり、政界工作が行われました。しかし、資金提供があったにもかかわらず、レーダー基地は完成しませんでした。この不正は経営改善には寄与せず、さらなる資金流出を招くことになりました。

金屏風事件

1985年には、伊坂らは不良債権を抱えるファミリー企業の整理に着手しますが、平和相互銀行の株式を担保に取る圧力をかけました。あるファミリー企業は株券を提出しましたが、英一は一蹴しました。しかし、伊坂は遂に英一を解任し、経営権を掌握することに成功します。

その後、平和相互銀行は2163万株の株を売却し、裏金を利用して株を取り戻す計画が立てられましたが、結果的には失敗し、政界との絡みにより多くの疑惑が浮上しました。

事件の終焉

事件が露見したことで、平和相互銀行は住友銀行によって救済合併され、事実上消滅しました。この一連の事件は、日本の銀行業界における信頼を大きく損ない、権力の乱用と金融不正がどのように結びつくかを強く示す結果となりました。

この事件は、その後の金融規制に影響を与え、日本の金融機関の透明性を高めるための改革の契機となったのです。

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