平壌市電

平壌市電の概要と歴史

平壌市電は、日本の統治下にあった朝鮮の平壌府で創設された路面電車を起源とし、現在の朝鮮民主主義人民共和国の首都、平壌直轄市にて運行されています。日本統治時代において、朝鮮半島の主要都市であった釜山、京城（現ソウル）、平壌には路面電車がありましたが、釜山及びソウルの路面電車は1968年に廃止されました。

平壌市電も、1950年代初頭の朝鮮戦争で大きなダメージを受け、一時期その運行は途絶えました。1953年以降、長い間路面電車は存在しない状態が続きました。朝鮮戦争後の平壌では、自動車の所有がほとんどなく、公共交通機関としては無軌条電車（トロリーバス）や地下鉄が主要な選択肢とされていました。

しかし、都市の発展に伴い、交通機関の需要が高まる中で、より多くの乗客を効率よく運ぶために「軌道電車」と表現される新たな路面電車の設置が決定されました。1991年に初めての路線が開業し、現在では3つの系統が運行されています。料金は2006年時点で5ウォンであり、無軌道電車と共通の運賃体系が採用されています。また、回数乗車券（市内車票）も利用可能です。

運行状況と課題

平壌市電の運行は、発電所の老朽化や資源不足により1990年代後半には不安定でしたが、近年は電力事情が改善されつつあり、徐々に安定した運行が戻ってきています。しかし、依然として国のインフラには多くの課題が残っています。2003年には、大同江を渡る橋の老朽化により、1号線の一部区間が廃止され、代替としてバスが運行されています。

外国人旅行者にとって、平壌市電は初めて開放された交通手段の一つです。これまでは簡単には乗ることができませんでしたが、現在では観光ツアーの一環として利用可能です。ただし、利用には事前にツアーへの予約が必要となります。特に、貸切列車としての利用になりますので、他の一般市民とは異なる体験をすることができます。

車両と特別路線

使用されている車両は、チェコ製のČKDタトラが主流で、様々なタイプが存在します。特に低床式車両もあり、乗客にとって利用しやすい構造となっています。また、清津市電の開業に伴い、一部の車両は散逸されました。

他にも、金日成と金正日の遺体が安置されている錦繍山太陽宮殿専用の路面電車があります。この路面電車は無料で運行され、車両はスイス製で、一般の市電とは異なる軌間（1000mmの狭軌）を採用しています。観光客専用のサービスとして、多くの人々がこの特別な路線を訪れています。

結論

平壌市電は、戦後の運行復活から現在に至るまで、朝鮮の交通事情に一石を投じる重要な役割を果たしています。都市の成長とともに、その運行形態や利用者層も変化していますが、今後の展望と課題も多く残されています。観光としての側面だけでなく、地域住民の交通インフラとしてもその重要性は増しています。

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