平尾十三塚

平尾十三塚（ひらおじゅうさんづか）

東京都稲城市平尾と神奈川県川崎市麻生区の境に位置する平尾十三塚は、東京都内において唯一、すべての塚が残存している貴重な十三塚です。この場所は、稲城市平尾二丁目にあり、丘陵地帯の開発が進んだ中でも、自然の形を保っている区域の一部となっています。

地理と形成

平尾地域は、東京都多摩丘陵の一部であり、その地勢を利用した平尾団地が広がっています。しかし、平尾十三塚はこの団地の南側にあり、丘陵の稜線に沿って整然と並ぶ13基の塚がほぼ東西方向に配置されています。一般的な十三塚の特徴と同様、中央に位置する7号塚は他の塚よりも大きく、残る6基の塚はその両側に小さめに造られています。

歴史的背景

平尾十三塚の近くには、1536年に長信という僧侶が埋められた「平尾入定塚」があり、また平尾一丁目には1708年に築造された「平尾原経塚」が存在します。これらは仏教に関連する塚であり、平尾地域が仏教文化の中心の一つであることを示しています。このように、平尾十三塚は単なる遺跡ではなく、広範囲に及ぶ歴史的文化の一部としての重要性を持っています。

1959年と1968年には発掘調査が行われ、特に中央の7号塚が重点的に調査されましたが、結果としては出土品が全く見つからず、塚の年代や目的などについては未解決のままとなっています。

確証と論争

また、1742年に残された馬場家の記録によれば、平尾と川崎市側の村々との間で土地に関する争いが存在していました。これに関連して、平尾入定塚と平尾十三塚を結ぶ線が村の境界として定められたことが記載されています。このことからも、平尾十三塚が江戸時代前半から存在していたことは確実と考えられています。

平尾十三塚は、古代からの歴史を今に伝える重要な文化財であり、その存在は地域のアイデンティティとしても大切にされています。現地を訪れれば、歴史と自然が融合した独特の雰囲気を体感でき、訪問者に深い感慨をもたらすことでしょう。地域の人々によって今も守られ、記憶されている平尾十三塚は、東京と川崎の歴史的結びつきを象徴する特別な場所です。

もう一度検索