入定

入定とは

入定（にゅうじょう）とは、本来「禅定に入る」という意味の仏教用語です。しかし、真言宗においては、特に弘法大師空海が永遠の瞑想に入ったという伝説的な信仰を指す言葉として用いられます。空海は、衆生救済のために、弥勒[[菩薩]]が出現する時まで瞑想を続けると信じられています。

空海の入定信仰

弘法大師空海は、承和2年（835年）に入定したとされています。これは、単なる死ではなく、生死の境を超えて永遠の瞑想に入った状態を意味します。現在も、高野山奥之院の弘法大師御廟で入定していると信じられ、1200年もの間、毎日欠かさず「生身供（しょうじんぐ）」という儀式が行われています。

生身供では、奥之院の維那（ゆいな）と呼ばれる僧侶が、1日2回、御廟に空海の食事と衣服を届けます。御廟の内部は維那以外は立ち入ることができず、その様子は謎に包まれています。維那を務めた者も、その詳細を他言することはありません。

空海の死因については、伝真済撰の『空海僧都伝』では病死とされ、『続日本後紀』には遺体が荼毘に付されたと記されています。しかし、後世には空海が入定したという記述が見られるようになります。現存する資料で最も古いものは、空海の入寂から100年以上経った康保5年（968年）に仁海が著した『金剛峰寺建立修行縁起』です。この書物には、入定した空海は49日を過ぎても容姿が変わらず、髪や髭が伸び続けたと記されています。

また、『今昔物語』には、高野山が東寺との争いで荒廃していた時期に、東寺長者であった観賢が御廟を開いたという話が記されています。この時、石室と厨子で二重に守られた空海は、坐禅を組んだ姿で安置されており、観賢は伸びていた空海の髪を剃り、衣服や数珠を整えた後、再び封印したとされています。

さらに、空海は入定後も諸国を行脚しているという伝説もあります。その証拠として、毎年3月21日に高野山の宝亀院で行われる空海の衣裳を改める儀式の際、衣裳に土が付いていることが挙げられます。

その他の「入定」

後世には、断食や生き埋めなどの苦行の末に絶命し、そのままミイラ化する「即身仏」となる行為も、空海の入定信仰になぞらえて「入定」と呼ばれるようになりました。しかし、これらの行為は真言密教の教義に由来するものではなく、民間信仰の領域に属するものであり、空海の入定信仰とは本質的に異なるものです。

まとめ

入定は、単なる死ではなく、永遠の瞑想に入るという特別な状態を指します。特に、弘法大師空海の入定は、真言宗において重要な信仰の対象であり、1200年以上も続く儀式や伝説に彩られています。入定と即身仏は混同されがちですが、その起源や意味合いは大きく異なります。

参考資料

“高野山奥之院御廟　〜1200年間続く弘法大師空海の食事〜｜わかやま歴史物語”. 2020年5月18日閲覧。

関連項目

空海
金剛峯寺#奥之院
即身仏
涅槃
入滅

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