平尾原経塚

平尾原経塚の概要

平尾原経塚（ひらおはらきょうづか）は、東京都稲城市平尾一丁目に所在し、1708年（宝永5年）に築造された経塚です。この経塚は経典供養塔と一体であり、発掘調査によって得られた数々の貴重な出土品から，「平尾原経塚出土品及び供養塔」として稲城市の指定文化財となっています。

地域の特徴

稲城市平尾は多摩丘陵の一部で、多くの丘陵地帯が開発され、平尾団地が建設されるなど、地域は大きく変化しています。平尾原経塚は、地域の交通の要所である平尾中央通り沿いに位置し、その表記住所は平尾一丁目49番地7です。元々この経塚は20メートルほど西側にありましたが、1992年（平成4年）に建築工事に伴い移設されました。

経塚の歴史

この経塚は、16世紀から江戸時代までの間に盛んに建設された「六十六部回国経塚」の一つです。これは、修行僧が全国に点在する霊場で写経を行い、その記念として経典を納めた塔を築くという風習から生まれました。移設前の経塚の大きさは、約6メートル×4.5メートルの楕円形で、高さは約70センチメートルでした。経典供養塔の碑文からは、江戸時代中期の1708年に築造されたことが明らかになりました。この碑文には「数殊一切施主等不残記之入壱安置石仏下」といった記述が見られます。

発掘調査

1976年（昭和51年）には、経塚の発掘調査が実施されました。この際、供養塔の下に存在した塚本体の敷石や盛土を取り除くと、関東ローム層に到達し、そこに掘り込まれた土坑（埋納施設）からは、備前焼の大甕や経筒が発見されました。経筒には、鏡や経巻の軸先、寛永通宝、さらには3つの木箱が納められており、これらにはおそらく経典が入っていたと考えられています。しかし、経典は腐食しており、開けることはできませんでした。興味深いことに、木箱のうちの一つには「武州豊嶋郡氏□」「傳心」と読まれる墨書きがありました。

周辺の文化財

平尾原経塚の南西方向には、1536年（天文5年）に僧侶の長信が入定するために埋葬された「平尾入定塚」が存在します。また、入定塚の東側には13基の塚が全て現存する「平尾十三塚」があり、平尾地域は仏教や民間信仰に関係する塚が密集していることで知られています。

終わりに

経塚は元の位置から移設されていますが、六十六部回国経塚の発掘調査事例は非常に限られている中で、平尾原経塚は貴重なケースです。碑文や埋納物との関係性が明らかにされ、その重要性から出土品と供養塔が市の有形文化財となっています。したがって、平尾原経塚はその歴史的価値や文化的意義において注目すべき遺構となっています。

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