平忠度

平忠度（たいら の ただのり）

平忠度は平安時代の武将であり、平家一門の重要な人物の一人です。彼は平清盛の異母弟で、平家の栄光を背景に数々の戦いに参加しました。忠度の生涯を振り返ると、彼の武士としての側面と、歌人としての才能が際立ちます。

生い立ちと経歴

忠度は、天養元年（1144年）に伊勢平氏の棟梁である平忠盛の六男として生まれました。彼の母は異説もありますが、藤原為忠の娘であったとされています。忠度は紀伊国の熊野地方で成長し、その地で熊野別当湛快の娘と結婚したことも記録されています。彼の公歴は、治承2年に従四位上、治承3年には伯耆守として任命され、治承4年には正四位下・薩摩守に昇進しました。

歌人としても評価が高く、藤原俊成に学びました。平家一門として都落ちの際には、6人の従者と共に都へ戻り、俊成のもとに百余首の自作歌を託しました。彼の作品は『千載和歌集』やその後の勅撰和歌集に多く収められ、その中には『故郷の花』として知られる歌が一首含まれています。

戦いと最期

忠度は源頼朝討伐や源義仲討伐のための多くの戦に赴きました。特に一ノ谷の戦いでは、源氏方の岡部忠澄と激闘を繰り広げました。その戦いにおいて彼は41歳で討ち死にしました。『平家物語』によると、忠度は源氏に紛れ込む戦術を用いましたが、独特の歯黒をつけていたために正体が露見してしまいました。戦場は現在の明石市天文町付近で、ここが「両馬川」と呼ばれる理由です。

彼が討たれた後も彼の勇敢さは敵味方を問わず惜しまれ、忠澄は忠度の菩提を弔うために清心寺に供養塔を建立しました。明石市には忠度の墓とされる「忠度塚」があり、その周辺は昔から「忠度町」と称されています。また、神戸市には忠度の腕塚と胴塚が存在し、地域文化財として認定されています。

歌と文化

忠度の死後にその名は歌や芸能の中でも言及され、唱歌「青葉の笛」では彼の物語が描かれており、彼の遺した歌の重要性が強調されています。特に、彼の歌を詠んだ作品は、後の世代によっても revered され、歌の背後にある人間ドラマが語り継がれています。

忠度の名前はその官名「薩摩守」に掛けて「無賃乗車」的な意味合いで使われることもあります。狂言『薩摩守』や能『忠度』では、彼の霊が自らの歌の作者名が知られないことを嘆く場面が描かれており、文化的な影響を与えています。

系譜と家族

彼は父である平忠盛と母の藤原為忠の娘との間に生まれ、他にも熊野別当湛快の娘や良岑高光の娘との結婚の記録があります。彼の子には平忠行がいます。

関連作品

忠度に関する物語は多岐に渡り、テレビドラマでの再現なども行われています。特に『新・平家物語』や『平清盛』などのシリーズでは、忠度の物語がドラマティックに描かれています。彼の存在は、平家物語の重要な一部であり、今もなお多くの人々の記憶に刻まれています。

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