平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法

放射性物質汚染対処特措法について

2011年3月11日に発生した東日本大震災に伴う福島第一原子力発電所の事故は、広範囲にわたる放射性物質による環境汚染を引き起こしました。この未曽有の事態に対処するため、同年8月30日に「平成二十三年三月十一日に発生した東北地方太平洋沖地震に伴う原子力発電所の事故により放出された放射性物質による環境の汚染への対処に関する特別措置法」（以下、放射性物質汚染対処特措法）が制定されました。

法律の概要

この法律は、原発事故によって放出された放射性物質による環境汚染に対処するための特別な措置を定めるものです。汚染された廃棄物の処理や除染措置、国や地方公共団体、原子力事業者の責務などを明確にすることで、放射性物質による環境汚染が人の健康や生活環境に及ぼす影響を速やかに低減することを目的としています。

制定の背景

原発事故発生当初、放射性物質による汚染の実態が不明確であったため、汚染された廃棄物の取り扱いが大きな課題となりました。特に、福島県内の災害廃棄物や下水汚泥から高い濃度の放射性物質が検出されたことから、その処分方法について早急な対応が求められました。当初は既存の廃棄物処理法の枠組みで対応が試みられましたが、その限界から新たな法的な枠組みが必要と判断され、放射性物質汚染対処特措法が制定されることとなりました。

法律の構成

放射性物質汚染対処特措法は、以下の章で構成されています。

第1章 総則：法律の目的や基本理念を定めています。
第2章 基本方針：汚染対処に関する基本方針を示しています。
第3章 監視及び測定の実施：環境汚染状況の監視と測定について定めています。
第4章 事故由来放射性物質により汚染された廃棄物の処理及び除染等の措置等：汚染廃棄物の処理や除染措置に関する詳細な規定を設けています。
第5章 費用：これらの措置にかかる費用負担について定めています。
第6章 雑則：その他必要な事項を定めています。
第7章 罰則：法律に違反した場合の罰則を定めています。

主な内容

この法律の主な内容は、以下の2点です。

1. 放射性物質に汚染された廃棄物の処理: 汚染されたがれきや土壌などの廃棄物を適切に処理するための基準や方法を定めています。具体的には、放射性物質の濃度に応じて処分場を区分し、安全な処理を確保するための措置が講じられています。
2. 除染: 放射性物質によって汚染された地域を除染するための措置を定めています。除染の対象となる地域は、汚染の程度に応じて「除染特別地域」と「汚染状況重点調査地域」に区分され、それぞれに応じた除染計画が策定されます。

関係者の責務

放射性物質汚染対処特措法では、国、地方公共団体、原子力事業者の責務を明確に定めています。

国: 汚染対処に関する基本的な政策を策定し、必要な財政措置を講じます。また、中間貯蔵施設や最終処分場の確保を責任を持って行います。
地方公共団体: 国の施策に協力し、地域の状況に応じた適切な役割を果たします。
原子力事業者: 事故を起こした事業者は、汚染対処に必要な措置を誠意をもって講じるとともに、国や地方公共団体の施策に協力する義務があります。

用語の定義

この法律では、以下の用語が定義されています。

除染特別地域: 事故後1年間の積算線量が20ミリシーベルトを超えるおそれのある地域。具体的には、計画的避難区域や警戒区域が該当します。
汚染状況重点調査地域: 追加被曝線量が年間1ミリシーベルト以上の地域を含む市町村で、重点的な調査測定が必要な地域。
* 中間貯蔵施設: 汚染された土壌や廃棄物を一定期間保管する施設。

まとめ

放射性物質汚染対処特措法は、東日本大震災に伴う原発事故によって生じた放射性物質による環境汚染に対処するための重要な法律です。この法律に基づき、汚染廃棄物の処理や除染措置が計画的に進められています。国、地方公共団体、原子力事業者、そして国民一人ひとりが協力し、放射性物質による環境汚染からの早期回復を目指すことが重要です。

この法律は、日本の環境政策において重要な位置を占めており、今後の環境回復に向けた取り組みにおいて、引き続き重要な役割を担っていくと考えられます。

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