平成2年台風第19号

平成2年台風第19号（フロー）の概要

1990年9月に発生した台風19号（国際名：フロー）は、日本に大きな被害をもたらした台風です。この台風は、9月13日にグアム島南東沖で発生し、発達しながら北西に進みました。9月17日には沖縄南東沖で猛烈な勢力となり、中心気圧890hPa、最大風速60m/sを記録しました。これは、1987年の台風9号以来となる900hPa未満の気圧でした。

その後、台風は進路を北東に変え、9月19日20時過ぎには、和歌山県白浜町付近に上陸しました。上陸時の勢力は、中心気圧945hPa、最大風速45m/sと非常に強いものでした。当初の予想よりも進行速度が遅くなったため、上陸が1日遅れました。台風はその後、勢力を弱めながら北陸地方、東北地方を通過し、9月20日12時前に岩手県宮古市付近から三陸沖に進み、温帯低気圧に変わりました。

この台風は、気象庁の観測史上、平成に入ってから最強クラスの台風の一つであり、気象庁は1961年の第二室戸台風以来となる警戒を呼びかけました。秋雨前線が本州上をゆっくりと南下していたため、台風の影響で前線の活動が活発化し、各地で大雨となりました。特に、栃木県壬生町・宇都宮市では竜巻が発生し、住宅に大きな被害が出ました。台風が沖縄近海に達した17日頃から、九州、四国、紀伊半島などで強い雨が降り始め、台風通過後の20日まで、鹿児島県（特に奄美大島）や岡山県などを中心に全国各地で大雨による災害が発生しました。高知県では1時間に70mmを超える激しい雨が降り、四国地方や紀伊半島の山沿いでは、総降水量が900～1,100mmに達した地域もありました。また、兵庫県豊岡市で515.5mm、愛媛県伊予三島市で569mmと平野部でも記録的な大雨となり、東北地方でも北部を中心に200～300mmの降水量となりました。

台風の通過に伴い、高知県室戸岬では最大風速43.3m/s（最大瞬間風速61.2m/s）を観測し、南西諸島から東海地方にかけても、最大風速が20～30m/sとなる地域がありました。静岡県石廊崎では、8.07mの有義波高を観測しました。

一般的に、翌年の台風19号が「風台風」とされるのに対し、この台風は「雨台風」というイメージが浸透していますが、両者とも混同されやすい点に注意が必要です。

なお、この年は太平洋高気圧が例年以上に強く、秋になっても後退しなかったため、記録的な暖秋となりました。そのため、台風が日本列島に接近しやすい状態となっており、台風19号上陸後も、9月30日に台風20号、10月8日に台風21号、11月30日には台風28号が、同様の進路で和歌山県に上陸しています。

被害状況

この台風による被害は甚大で、以下の通りです。

死者: 42人
不明者: 2人
負傷者: 197人
住家全壊: 240棟
住家半壊: 816棟
床上浸水: 8,333棟
床下浸水: 58,029棟
河川氾濫：17,000箇所
土砂崩れ：2,200箇所
被害を受けた耕地：41,954ha
船舶被害：413隻
被害総額：1,322億円

外部リンク

災害をもたらした気象事例（前線、台風第19号） - 気象庁ホームページ
デジタル台風：台風199019号（FLO）- 総合情報（気圧・経路図） - 国立情報学研究所（北本朝展）

もう一度検索