平木収

平木収：写真文化に貢献した写真評論家と写真史研究家の生涯

平木収（1949年8月7日-2009年2月24日）は、日本の写真評論家、写真史研究家として知られています。写真評論家としての肩書きに強いこだわりを持ち、時代の流れや社会情勢を反映した写真批評、写真論を展開しました。後進の育成にも力を注ぎ、多くの写真家や研究者を育てました。

京都から東京へ：初期の経歴と写真との出会い

京都府宮津市に生まれ、京都市で育った平木氏は、早稲田大学第二文学部美術専攻を卒業しました。大学時代は写真部に所属し、写真への関心を深めていきます。卒業後は光村推古書院で短期間勤務した後、ヨーロッパに遊学。各地の美術館を巡り、その経験は後の評論活動の基礎を築くことになります。

帰国後、写真評論家の重森弘淹氏と出会い、写真評論家の道を歩み始めます。当初は経済的な苦労もあったようですが、カメラ・写真雑誌への寄稿などを経て、徐々に活動の場を広げていきました。

教育者としての側面：写真教育への貢献

1981年からは東京綜合写真専門学校で美学関係の講座を担当。その後も、武蔵野美術大学、早稲田大学、玉川大学、京都造形芸術大学、大阪OVC専門学校、そして九州産業大学芸術学部教授として、長年にわたり写真論や写真史の講義を行いました。多くの学生に写真文化への理解を深めてもらうため、熱心に教育に携わりました。

美術館設立と写真展企画：写真文化の発展への貢献

平木氏は、1985年にはつくば万博の併催イベントである「つくば写真美術館'85」の企画に参加。その後、川崎市市民ミュージアムの設立にも参画し、同館の学芸員として日本初の美術館内写真部門の立ち上げに貢献しました。

1994年にフリーとなり、独立後は「ピューリッツァー賞写真展」などの企画・監修を行い、日本の写真文化の発展に大きく貢献しました。数々の写真展を企画、監修することで、写真文化の普及に尽力したのです。

写真評論家としての業績：多角的な視点と深い洞察

平木氏の評論活動は、「時代性」「社会を映す鏡」「写真論写真」といった観点から、多角的に写真作品を捉え、深い洞察を示すものでした。常に時代性を意識し、社会状況と写真の関わりを深く考察した評論は、高く評価されています。

著作と参考文献

平木氏は『映像文化論』（武蔵野美術大学出版会）、『写真のこころ』（平凡社）などの著書を残しています。没後には遺稿集『平木収1949-2009』が出版され、その生涯と業績が後世に伝えられています。また、『85/05 幻のつくば写真美術館からの20年』といった図録も、彼の活動を知る上で貴重な資料です。

写真文化への貢献と豊かな人生

平木収氏は、写真評論家、写真史研究家、そして教育者として、日本の写真文化の発展に多大な貢献を果たしました。晩年は病気と闘いながら教鞭を執り続けましたが、2009年2月24日、食道癌のため59歳で逝去しました。彼の功績は、日本の写真界に長く記憶されることでしょう。 写真への深い愛情と情熱、そして教育者としての熱意は、多くの人の心に深く刻まれています。

もう一度検索