平林広人

平林広人（ひらばやし ひろんど）：教育と児童文学に捧げた生涯

平林広人（1886年4月3日 - 1986年2月21日）は、日本の教育者、児童文学翻訳家、そしてデンマーク文学者として、その生涯を教育と文化の発展に捧げました。特にアンデルセンの研究者として広く知られています。

生い立ちと教育

長野県東筑摩郡上川手村（現在の安曇野市）で、元村長の息子として生を受けた平林は、旧制松本中学（現長野県松本深志高等学校）を卒業後、青山学院高等科へ進学。しかし、中退して独学でキリスト教地方伝導士の資格を取得するという異色の経歴を持ちます。その後、小学校長を務めるなど、教育者としての道を歩み始めました。

社会教育への貢献

平林の教育への情熱は、学校教育に留まらず、社会教育の分野にも及びました。東京市長・後藤新平の協賛を得て通俗大学会木崎夏期大学を開講。信濃通俗大学会を設立し、国民育成のための学習機会を提供しました。この活動は、後藤新平、加藤正治、今井五介、沢柳政太郎、伊藤長七、佐藤寅太郎といった著名人の協力を得て、現在の公益財団法人へと発展しています。

デンマーク留学と国際交流

1924年からの3年間、平林はデンマークの成人教育機関「アスコフ国民高等学校」に留学し、デンマークの教育や文化に深く触れました。帰国後は、青山学院専門部神学部講師や興農学園校長を歴任。満州に渡りメソジスト教会の創設にも参加するなど、国際的な視野を持って活動しました。

児童文学への情熱

平林は、児童文学の翻訳にも力を注ぎました。1962年に日本児童文学会が発足すると評議員に就任。1966年からは東海大学文学部で北欧史を講義しながら、数々の児童文学作品を翻訳し、日本に紹介しました。

主要な翻訳作品

『ベーリングの大探検 - 副司令ワクセルの手記』（ワクセル、石崎書店、1955年）
『シルク・ロード / ベーリングの大探検 / 暗黒大陸』（ヘディン / ワクセル / スタンレー著、平凡社、世界教養全集23、1961年）
『アンデルセン童話全集 4』 (矢崎源九郎共訳、講談社、1979年）

著書

『農民の国デンマルク』（文化書房、1924年）
『デンマーク語教本』（編、北欧文化協会、1953年）
『北欧人の海外雄飛とヴァイキング』（ベースボール・マガジン社、スポーツ新書、1958年）
『人間をつくる体操 - デンマーク体操の歩んだ道』 (ベースボール・マガジン社、スポーツ新書、1959年)
『北海の白鳥 - ヨハネス・クヌッセンとデンマーク海人魂』（関西デンマーク協会、1964年）
* 『アンデルセンの研究』（東海大学出版会、1967年）

晩年と栄誉

平林広人は、99歳という長寿を全うし、1986年にその生涯を閉じました。彼の功績は、リッダー・アフ・ダンボネグル勲章（デンマーク、1926年）、日本ボーイスカウト連盟功労章（1961年）、勲五等双光旭日章（1966年）など、数々の栄誉によって称えられています。

平林広人の生涯は、教育者、翻訳家、国際交流の推進者として、多岐にわたる分野で社会に貢献したものでした。彼の情熱と努力は、後世に大きな影響を与え続けています。

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