加藤正治

加藤正治：日本の民事訴訟法を確立した法学者

加藤正治（1871年4月29日 - 1952年3月16日）は、明治から昭和にかけて活躍した日本の法学者です。民事訴訟法の分野で多大な功績を残し、東京大学名誉教授、中央大学学長・総長を歴任しました。その学問的貢献はもとより、教育者としても多くの人材を育成し、日本の法学界に大きな影響を与えました。

生涯

加藤正治は、信濃国筑摩郡上生坂村（現在の長野県東筑摩郡生坂村）に生まれました。旧姓は平林でしたが、後に日本郵船副社長の加藤正義の養子となりました。旧制松本中学、第一高等学校を経て、1897年に東京帝国大学英法科を卒業。岡野敬次郎に師事し、法学の道を志しました。

1899年からは民事訴訟法・破産法及び海法研究のためヨーロッパへ留学。ドイツを中心に、現地の法制度や学説を深く学びました。1903年に帰国すると同時に東京大学教授に就任。1904年には法学博士の学位を取得し、1925年には帝国学士院会員となりました。

東京大学では長年にわたり教鞭を執り、民事訴訟法の分野で多くの研究成果を発表しました。1931年に東京大学を退職し、名誉教授の称号を受けました。その後も、学士院幹事、三菱信託監査役・取締役、枢密院顧問官などを歴任し、社会に貢献しました。特に、枢密院顧問官としては、日本国憲法などの重要法案の審議に加わりました。

1948年には中央大学学長に選任され、翌年には総長に就任。教育者として、中央大学の発展に尽力しました。1952年3月16日、80歳でその生涯を閉じました。

業績

加藤正治は、民事訴訟法の分野において、理論と実務の双方に貢献しました。彼の研究は、日本の民事訴訟法の基礎を築いたと言っても過言ではありません。主要な著書として、『破産法研究』、『民事訴訟法要論』、『強制執行法要論』などがあります。これらの著書は、当時の法学界に大きな影響を与え、現在でも重要な文献として参照されています。

また、加藤正治は教育者としても優れており、兼子一、菊井維大など、多くの優秀な法学者を育成しました。彼らは、加藤の教えを受け継ぎ、日本の法学界の発展に貢献しました。

人物

加藤正治は、法学者としての活動の傍ら、俳句、俳画、茶道などを嗜む風流人でもありました。俳号は犀水といい、故郷の犀川に由来しています。松本市城山公園には頌徳碑が建てられており、その功績を称えています。また、母校である旧制松本中学の同窓会長や長野県人連合会長を務めるなど、地域社会にも貢献しました。

1917年には、澤柳政太郎を総裁、加藤を副総裁として財団法人「日本アルプス会」が結成されました。これは、日本のアルプスの自然保護と振興を目的としたもので、加藤の自然を愛する心が表れています。

家族

妻のすみは、養父である加藤正義の長女です。長男の正徳はフランス童話集を出版、三男の正隆は中央大学文学部教授を務めました。二女の泰子は法学者の兼子一の妻となりました。加藤家は、法学、文学、実業など、多岐にわたる分野で活躍する人材を輩出しています。

頌徳展

生地の生坂村では、2012年に加藤正治の「頌徳展」が初めて開催され、その生涯と業績が紹介されました。生家で発見された資料などが展示され、地域住民に加藤の功績を再認識する機会となりました。

加藤正治は、日本の法学界に多大な貢献をした偉大な法学者です。彼の研究と教育は、日本の法制度の発展に大きく寄与し、後世に多大な影響を与え続けています。

参考文献
『第十六版人事興信録（上）』1951年 か10
無料公開マンガふるさとの偉人「日本の近代化を進めた法学者 加藤正治物語」 発行　長野県生坂村教育委員会 2022年3月発行

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