平林英子

平林英子は、明治35年（1902年）に長野県南安曇郡梓村（現在の松本市）に生まれ、2001年に99歳で亡くなった日本の小説家です。本名を中谷英子といい、夫は同じく作家の中谷孝雄です。

彼女は、作家であり思想家でもあった武者小路実篤に師事し、彼が創設した共同体「新しき村」に参加しました。1924年には中谷孝雄と結婚し、夫婦として、また同志として、文学の道を歩むことになります。

1930年代には、プロレタリア文学運動に関わり、1932年には日本プロレタリア作家同盟に加入。社会主義的な思想を背景に、社会の矛盾や労働者の苦悩を描いた作品を発表しました。しかし、1934年に作家同盟が解散すると、『日本浪曼派』に所属し、より内面的なテーマや感情を描くようになります。

戦時中の1940年には、創作集『南枝北枝』を出版。戦後も創作活動を続け、児童向けの作品や、自身の経験に基づいた作品を発表しました。

1974年には、『夜明けの風』で芸術選奨新人賞を受賞。長年の創作活動が評価されました。

平林英子の作品は、社会的なテーマから個人的な感情まで、幅広いテーマを扱っています。彼女の作品からは、激動の時代を生き抜いた女性の視点や、社会に対する批判精神、そして人間に対する深い愛情が感じられます。

彼女の主な著書には、『南枝北枝 ぐろりあ・そさえて』(1940年)、『流れる星』(1949年)、『面影いずこ』(1950年)、『青空の人たち』(1969年)、『夜明けの風』(1973年)、『高原にも雀が』(1985年)、随筆集『マロニエと梅の花』(1991年)などがあります。

彼女の生涯や作品については、『風に向かった女たち 聞き書き 望月百合子、平林英子、松田解子 岡田孝子』（沖積舎 2001年）や、『来し方の記 5』（信濃毎日新聞社 1983年）などの書籍でより詳しく知ることができます。

平林英子は、日本の近代文学史において、プロレタリア文学から浪漫派文学へと作風を変化させながらも、独自の文学世界を築き上げた作家として記憶されるでしょう。

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