日本浪曼派

日本浪曼派について

日本浪曼派（にほんろうまんは）は、1930年代の後半に、保田與重郎を中心に発展した文学思想で、「日本の伝統への回帰」を呼びかけました。この運動は、近代を批判し古代を称賛する姿勢に基づいており、特に戦時中の日本における文化のあり方に影響を与えました。その思想の拡がりや関連する作家たちについて見ていきましょう。

機関誌の役割

日本浪曼派における主要なメディアである機関誌は、1935年3月に創刊され、1938年3月に幕を閉じました。この雑誌は、保田與重郎が主宰し、他にも神保光太郎、亀井勝一郎などが創刊メンバーとして参与していました。また、太宰治や中河与一といった著名な作家たちも同人としてその輪に加わりました。彼らは、文学界が直面していた暗い時代を打破するため、ある意味で新たな文学的潮流を生み出しました。

影響と批判

日本浪曼派が青年層に与えた影響は絶大でしたが、それに対する批判も存在しました。この時代の政治的背景から、右傾的な側面が文学に色濃く現れたため、保田やその仲間たちの思想は多くの議論を引き起こしました。特に、武田麟太郎らが創刊した『人民文庫』との対立や、杉浦明平による保田たちの行動への批判は、当時の思想界における重要な議論のひとつでした。

橋川文三はその著作『日本浪曼派批判序説』において、運動自体を深く分析し、その文体や影響を考察しました。三島由紀夫は、彼の著作『私の遍歴時代』の中で、浪曼派の文学誌である『文藝文化』について、当時の戦況の中で古典美を守る努力が重要であったことを述べています。こうした議論は今日でも語り継がれ、日本の文学史における重要な位置を占めています。

書籍と研究

日本浪曼派に関する書籍や研究も多く出版されています。例えば、『復刻版 日本浪曼派』や『日本浪曼派とはなにか』などがあり、これらは運動の流れや影響を知る手がかりとなります。また、近年の研究では、保田與重郎を中心にこの運動とアジアとの関連について触れた著作や、文学史上の哲学的考察も増えてきました。これにより、日本浪曼派の位置付けやその時代の文脈がさらに深く理解されることが期待されています。

関連事項

日本浪曼派は、日本の近現代文学史において特異な立ち位置を持っています。学徒出陣や国学といったテーマとも密接に関連しており、近代の超克を図る運動ともあいまって、当時の社会情勢や文化の在り方を映し出しています。本派の影響を受けた作家やその後の文学運動は、現代においても多くの議論を呼んでいます。

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