平沼専蔵

平沼専蔵：激動の時代を駆け抜けた実業家

平沼専蔵（ひらぬま せんぞう）は、1836年（天保7年）に武蔵国高麗郡飯能村（現在の埼玉県飯能市）で生まれ、1913年（大正2年）に波乱の生涯を終えた人物です。彼は、幕末から明治にかけての激動期に、相場師、実業家、そして政治家として多岐にわたる分野で活躍しました。

生い立ちと初期のキャリア

平沼専蔵は、幼少期から苦労を重ねました。7歳で足袋屋に奉公に出され、その後、千住宿の材木商を経て、横浜の海産物商である明石屋平蔵商店に勤務しました。これらの経験が、彼の後の事業家としての基盤を築いたと言えるでしょう。

事業家としての成功

1865年（慶応元年）、平沼専蔵は独立し、横浜本町で羅紗・唐桟の取引商を始めました。その後、1878年（明治11年）には生糸売込問屋の業務を引き継ぎ、土地売買や株式投資にも事業を拡大しました。この頃から、彼の才能は開花し、急速に財を成していきます。

平沼専蔵は、銀行業にも進出しました。1890年（明治23年）には横浜銀行と金叶貯蓄銀行（後の平沼貯蓄銀行）、1911年（明治44年）には平沼銀行を設立し、それぞれ頭取に就任しました。その他にも、横浜引取所歩合金取締役、第二十七国立銀行取締役、横浜共同電灯会社取締役など、数多くの企業の役員を兼任しました。

政界での活動

平沼専蔵は、政界にも進出しました。神奈川県会議員、横浜市会議員、同参事会員、横浜市水道事務所長などを歴任しました。1900年（明治33年）には、貴族院多額納税者議員に選出されましたが、高利貸しとしての悪評から、華族議員を中心とした同僚議員からの反発を受け、1901年（明治34年）に辞職しました。その後、1902年（明治35年）には衆議院議員に当選し、1期務めました。

武蔵野鉄道（西武鉄道）との関わり

平沼専蔵は、1911年（明治44年）に武蔵野鉄道（現在の西武鉄道）が池袋と飯能間の鉄道を計画した際、大株主となり初代社長を務めました。これは、彼の地元である飯能の発展に大きく貢献したと言えるでしょう。

慈善事業への貢献

平沼専蔵は、「強欲非道の高利貸」と批判されることもありましたが、1898年（明治31年）には私立平沼小学校を創設し、貧困層の子弟の教育に尽力するなど、慈善事業にも力を入れました。これは、彼の意外な一面を示すエピソードと言えるでしょう。

晩年と遺産

晩年、平沼専蔵は自身の財産を四分割し、自分、実子の八太郎、庶子の久三郎、養子の平沼延治郎（延次郎）に分配しました。これは、彼の家族に対する責任感と愛情を示しています。

家族構成

平沼専蔵の家族構成は以下の通りです。

二男：平沼八太郎（洋糸商）
三男（庶子）：平沼久三郎（平沼銀行役員）
養子：平沼延治郎（横浜銀行役員）
孫：平沼義太郎（地主、延治郎の長男）
* 孫：平沼覚治郎（江ノ島電鉄代表取締役、義太郎の弟）

平沼延治郎は、横浜財界の期待の星でしたが、株の大暴落によって破綻し、悲劇的な最期を遂げました。この出来事は、平沼専蔵の晩年にも大きな影響を与えたと考えられます。

まとめ

平沼専蔵は、激動の時代を駆け抜け、様々な分野で才能を発揮した人物でした。相場師、実業家、政治家としての活躍に加え、教育事業にも貢献した彼の人生は、現代においても多くの教訓を与えてくれます。彼の波乱に満ちた生涯は、日本の近代史を語る上で欠かせない一ページとなっています。

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