年金数理人

年金数理人とは

年金数理人とは、年金数理の専門家であり、厚生年金基金や確定給付企業年金などの年金制度において、その財政の健全性を維持するために重要な役割を担っています。1988年の厚生年金保険法改正により制度化され、1991年からは国民年金基金制度、2002年からは厚生労働大臣の認可を受ける確定給付企業年金にも適用されるようになりました。

職務内容

年金数理人の主な職務は、各企業年金の毎年度の決算や財政再計算など、年金財政に関する書類が、適正な年金数理に基づいて作成されているかを確認し、署名押印することです。特に厚生年金基金においては、継続的に財政検証を行う年金数理人を個別に指定することが義務付けられており、この指定された年金数理人は「指定年金数理人」と呼ばれます。

年金数理人になるための要件

年金数理人として認められるためには、以下の4つの要件を全て満たし、厚生労働大臣の認可を受ける必要があります。

1. 知識
公益社団法人日本アクチュアリー会が実施する試験（資格試験）の全科目に合格していること。
公益社団法人日本年金数理人会が実施する試験（能力判定試験）の全科目に合格していること。
上記の「資格試験」と「能力判定試験」に関して、以下の要件を全て満たしていること。
資格試験の「数学」及び「損保数理」（平成19年度以前については資格試験の「数学」）または能力判定試験の「基礎数理Ⅰ」に合格していること。
資格試験の「生保数理」または能力判定試験の「基礎数理Ⅱ」に合格していること。
資格試験の「年金数理」または能力判定試験の「年金数理」に合格していること。
資格試験の「会計・経済・投資理論」または能力判定試験の「会計・経済・投資理論」に合格していること。
能力判定試験の「年金法令・制度運営」に合格していること。
2. 経験
確定給付企業年金等の年金数理に関する業務に5年以上従事した者であること。
3. 責任者たる経験
年金数理業務の責任者として、年金数理業務に2年以上従事した者であること。
4. 十分な社会的信用
十分な社会的信用を有する者であること。

制度の問題点

年金数理人制度には、その独立性に関する問題点が指摘されています。多くの年金数理人は、企業から収入を得る受託会社の従業員であるため、事業主の意向に沿った財政検証を行いやすい状況にあるという指摘です。具体的には、本来合理的・客観的な基準で設定されるべき基準率を、事業主に有利になるように操作する可能性が指摘されています。これにより、年金数理人が企業の年金制度「改革」に助言することで、企業と利害相反関係にある加入者や受給者の受給権保護に悪影響を及ぼす懸念があります。

まとめ

年金数理人は、年金制度の健全性を保つ上で不可欠な存在ですが、その独立性については常に注意を払う必要があります。より公正で透明性の高い年金制度を維持するためには、年金数理人の役割と責任について、引き続き議論と改善が求められるでしょう。

参考資料

李洪茂・小笠原義秀『企業年金が危ない！』講談社α新書　2009年

関連項目

年金
保険
信託銀行
アクチュアリー
日本の法律・会計に関する資格一覧

外部リンク

財団法人日本年金数理人会

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