幸いってん

幸いってんについて

幸いってん（本名：津井一優）は、1974年1月19日生まれの元浪曲師で、兵庫県津名郡津名町の出身です。彼は浪曲親友協会に所属していたことでも知られています。

人物背景

幸いってんは、浪曲界への憧れが幼少期からありました。特に初代京山幸枝若に親しんだ父の影響で、早くから浪曲や河内音頭を耳にして育ちました。高校を卒業すると同時に浪曲界入りを希望したものの、残念ながら初代京山幸枝若の死去によりその夢は一時凍結されました。このため、彼は地元淡路島に戻り、第三セクターのハーブ園で特産品の販売やレストランの主任として職務をこなしました。

しかし、心の底から芸を追い求める気持ちを抑えきれず、25歳の時に2代目京山幸枝若（当時は京山福太郎）のもとに入門しました。以後、彼は厳しい修行を重ね、1999年12月にワッハ上方で開催された「京山一門会」にて初舞台を踏みました。

彼は、若手浪曲師として「幸枝若節」の使い手としての地位を築きました。その舞台内容は、『左甚五郎』や『会津の小鉄』、また『寛永三馬術』や『寛政力士伝』など、多彩な演目を含んでおり、笑いを交えた浪曲スタイルが特徴です。

活動と苦難

2007年に彼は後輩浪曲師と共に「新星浪曲☆新宣組」を結成し、若手浪曲界の盛り上げに尽力しました。この間、彼はルックスから「浪曲界の氷川きよし」と呼ばれることもありました。

しかし、2009年5月、自らのデビュー10周年の直前に急性骨髄性白血病と診断され、緊急入院を余儀なくされました。この疾患に対し、致死量限界の抗がん剤治療を受け、一度は寛解しましたが、再発に見舞われ、医師から余命3ヶ月の診断を受けることとなりました。この困難な状況の中、実妹がドナーとなり、造血幹細胞移植を受けるもではありましたが、成功には至りませんでした。

その後、再度の造血幹細胞移植に至り、生存率はわずか3%という厳しい戦いが続きました。療養中は、浪曲の映像を楽しみながら、「また舞台に立ちたい」という強い思いが彼を支えました。2年半の苦闘を経て、彼は見事に復帰を果たしました。

復帰と活動再開

2011年10月、故郷淡路島で舞台復帰を果たし、12月には上方浪曲界の中心地である「一心寺門前浪曲寄席」にも戻りました。2012年には、発病以来5年ぶりに東京の舞台にも立ち、大阪での連続公演も成功させるなど、精力的に活動しました。

2013年には他の浪曲師と共演し、彼の復帰を祝うイベントも開催。NHKラジオ「浪曲十八番」への出演や、新たな番組『いってん★さくらの浪曲倶楽部』の開始など、多方面での活躍が続きました。

さらに、千日前トリイホールでの公演では、復帰を祝われるイベントも行われました。彼は、同じ病に苦しむ知人を通じて骨髄バンク活動に貢献し、NPO法人「関西骨髄バンク推進協会」での啓発活動にも取り組みました。

引退

しかし、2014年に慢性腎不全が明らかになり、体調不良から引退を決意し、同年5月27日に浪曲親友協会を退会しました。幸福と苦しみの両方を経験しながらも、彼の浪曲への情熱や人々へのメッセージは、今も多くの人々に感動を与え続けています。

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