幻影城 (雑誌)

幻影城（げんえいじょう）

『幻影城』は、1975年から1979年まで発行された日本の小説雑誌で、特に探偵小説に特化した内容が特徴です。創刊号は1975年の2月に登場し、初期は絃映社が発行元でしたが、1976年の2月号以降は株式会社幻影城に移ります。この雑誌の編集長には、書誌研究者としても名高い島崎博が就任し、彼の指導の下で多くの探偵小説が掲載されました。特に、戦前の探偵小説に関する作品が豊富に取り入れられ、読者の間でも高い評価を得ていました。

また、特定の作家に焦点を当てた『別冊幻影城』も発行され、こちらは全16冊に及びます。1975年に設けられた「幻影城新人賞」は、多くの著名な作家を輩出しました。具体的には、泡坂妻夫、栗本薫、李家豊（田中芳樹）、連城三紀彦、筑波耕一郎などがこの賞を受賞し、以降、小説家として活躍の場を広げていきました。

さらに、1975年秋に発足した愛読者によるファンクラブ「怪の会」も注目を集めました。このサークルには、宮部みゆきや長谷部史親、縄田一男、よしだまさし、横井司、山前譲、細谷正充など、多様な作家たちが参加し、雑誌の発展に寄与しました。

1978年4月の編集後記では、『幻影城』が次号から研究評論中心の季刊誌になるという計画が発表されましたが、同時に新たに小説中心の月刊誌も創刊する意向が示されました。しかし、予告された雑誌『ブラックホール』は実現されませんでした。

1979年1月号は、創刊50号を記念する特大号として300ページを超えるボリュームとなりましたが、その後休刊となります。5月号で一時的な復刊は果たしましたが、結局次の号を出すことはできず、1979年7月号が最終号となってしまいました。

2016年には創刊40周年を記念して「終刊号」が特別編集で発行されました。この号では、栗本の変名「京堂司」で書かれた短編が収められ、再びファンの間で話題を呼びました。

『幻影城』に掲載された代表的な作品には、竹本健治の『匣の中の失楽』があり、後の探偵小説界において重要な位置を占める作品となっています。また、本誌の発展や島崎博の人物像を振り返る文献も存在し、2006年に刊行された『幻影城の時代』は回顧編と資料編に分かれ、多くの著名な執筆者が関与しました。さらに、2008年には『幻影城の時代 完全版』が発行され、さらなる情報が追加されました。

このように『幻影城』は、ただの雑誌ではなく、日本の探偵小説の発展とともに歩んできた重要なメディアとして位置づけられています。

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