幻想即興曲

即興曲第4番 嬰ハ短調 遺作 作品66

フレデリック・ショパンが作曲した「即興曲第4番嬰ハ短調遺作作品66」は、彼の遺した作品の中でも特に有名なピアノ曲の一つとして知られています。この曲は、ショパンの作品の中で彼自身が自ら出版することを許可しなかったため、生前には公開されることがありませんでした。1865年に友人であるユリアン・フォンタナの手によって、ショパンの遺志に反して「幻想即興曲」というタイトルで世に出されました。

曲の構成

この即興曲は、複合三部形式に基づいており、全体は大きく分けてA、B、A'の構造を持っています。

Allegro agitato (A)

曲は嬰ハ短調で始まり、序奏の後に三部形式で展開します。この部分はa-b-aという形をとり、それに続いて経過句が導入されます。特筆すべきは、左手は1拍を6等分するリズム、右手は1拍を8等分するリズムを用いており、このように異なるリズムを同時に使う構造を持つことからポリリズムの要素を含んでいます。

トリオ Più lento - cantabile (B)

次に変ニ長調に移行し、ゆっくりしたリズムの部分へと進みます。ここでも序奏の導入があり、三部形式で(a - a' - b - a')を展開します。後半ではb - a'のフレーズが若干変化しながら繰り返されます。

（フォンタナ版はPresto）(A')

再び嬰ハ短調に戻り、最初の主題が再現されます。ここでは、Aの構造が再度現れます。

コーダ

最終的にはA'のテーマを経て、Bの主題が左手で回想される形で静かに曲が締めくくられます。

公表の経緯

この作品が初めて公衆の目に触れたのは、ショパンが亡くなった後の1855年のことです。作曲者自身は出版を控えるよう友人に請願していましたが、フォンタナがその意向を無視して、公表に踏み切ったため、今日の私たちがこの名曲を聴くことができるようになりました。

複数の版

即興曲第4番にはいくつかの筆写譜が存在しますが、ショパンの自筆譜は長い間発見されていませんでした。ところが、1962年にエステ公爵夫人に献呈された1835年の自筆譜がアルトゥール・ルービンシュタインによって発見されました。この発見は、様々な版との相違が多く見受けられ、後に記されたものであると考えられています。

新たに見つかった自筆譜を元にした版が、ウニヴェルザール出版社から出されているウィーン原典版や、ポーランド音楽出版社のナショナル・エディションなどで入手可能です。また、ペータース社やヘンレ社からも原典版が発行されています。中にはフォンタナ版と自筆譜の両方が掲載された版もあり、興味深い音符の変更については詳細が不明な点が多いです。

世界初録音

この作品の録音は、現在では音楽ストリーミングサービスなどで簡単に探し出すことができます。中でも、フォンタナ版の録音はヴィルヘルム・バックハウスによる1908年のもの、自筆譜版はアルトゥール・ルービンシュタインによる1964年の録音が有名です。

まとめ

ショパンの即興曲第4番は、その感情豊かなメロディーと複雑なリズム構造により、多くの演奏家や聴衆に愛され続けています。曲がどのようにして世に出たのか、その過去と多様な版に注目することで、音楽の理解がより深まるでしょう。

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