幻覚ピカソ

『幻覚ピカソ』は、古屋兎丸による漫画作品で、『ジャンプスクエア』（集英社）にて2008年10月号から2010年5月号まで連載されました。作者にとって初の少年漫画であり、現実世界と絵の中の世界をペン画と鉛筆画で描き分ける独特な表現が特徴です。

概要

この作品は、主人公の葉村ヒカリが、事故で亡くなったクラスメイトの山本千晶と再会し、人助けをする中で成長していく物語です。作中では、現実世界をペン画で、絵の中の世界を鉛筆画で描いています。また、主人公が心の闇を絵にする際には、スケッチブックと2B鉛筆を使用するなど、画材が物語に深く関わっている点も特徴です。

ストーリー

絵を描くことが好きな少年、葉村ヒカリは、クラスメイトの山本千晶とともに、いつも河原で絵を描いていました。しかし、ある日、二人は事故に巻き込まれ、千晶は亡くなってしまいます。失意の中、ヒカリの前に、亡くなったはずの千晶が現れ、人助けを懇願します。千晶は、ヒカリが人の心の闇を描いた絵の中に入り込み、その闇を解決することで、自身の腐敗を食い止めることができると告げます。

主要登場人物

葉村ヒカリ（はむら ヒカリ）

本作の主人公。通称「ピカソ」と呼ばれる高校2年生の少年です。内向的な性格で、爪を噛む癖があります。絵を描くことが好きで、レオナルド・ダ・ヴィンチを尊敬しています。

河原で絵を描く部活動「河原部」を立ち上げ、千晶と活動中にヘリコプターの墜落事故に遭遇。奇跡的に助かりますが、千晶は亡くなってしまいます。その後、千晶の霊が現れ、人助けをするように促されます。事故以降、人の心の闇が見えるようになり、その闇を絵にすることで、絵の中の世界に入り込むことができるようになります。

最初は周囲と関わることを避けていましたが、徐々にクラスメイトと関わりを持つようになります。しかし、自身の能力や千晶の存在を打ち明けたことで、一時的に孤立してしまいます。最終的には、自身の深層心理と向き合い、千晶の死を受け入れることで、現実世界に戻り、河原部の活動に積極的に参加するようになります。

山本千晶（やまもと ちあき）

本作のヒロイン。ヒカリのクラスメイトで、河原部の部員です。心理学などの難しい本を好んで読みます。ヘリコプターの墜落事故で亡くなりますが、幽霊となってヒカリの前に現れます。普段は小さな姿で現れますが、絵の中では生前の姿でヒカリをサポートします。

実は、ヒカリの前に現れた千晶は、生前に彼女が渡した紙切れであり、そこにはヒカリへのメッセージが込められていました。

クラスメイト

杉浦（すぎうら）: スポーツ万能、頭脳明晰な優等生で、ヒカリのクラスメイト。当初はヒカリの行動を理解できませんでしたが、後に協力するようになります。
椹木茜（さわらぎ あかね）: ティーンズ誌のモデルで、ヒカリのクラスメイト。過去のトラウマから摂食障害を抱えていましたが、ヒカリのおかげで克服します。
万場（まんば）: 口数が少なく、暗い印象の少年。小椋琴音に恋心を抱いており、ヒカリのおかげで交流を持つようになります。
小椋琴音（おぐら ことね）: 学級委員を務める優等生。漫画好きで、万場と恋人関係になります。
菱田洋介（ひしだ ようすけ）: 性同一性障害に苦しむ少年で、クラスメイトの理解を得て、女性として生きることを選びます。
佐倉萌（さくら もえ）: アイドルを夢見る少女。ボリスワールドのキャラクターをこよなく愛しています。
本田優人（ほんだ ゆうと）: 元々は成績優秀だったものの、不登校になっていた少年。ピカソの協力で、母親に自身の思いを伝え、学校に復帰します。
來未（くみ）: 杉浦に好意を寄せるクラスメイト。

その他の人物

旺太（おうた）: 杉浦の友人で、野球部のピッチャー。架空の恋人に執着していましたが、千晶の助けを借りて過去を乗り越えます。
持田（もちだ）: 野球部のマネージャーで、旺太に恋心を抱いています。
椹木花奈（さわらぎ かな）: 茜の妹で、ゴスロリファッションを好む少女。姉にコンプレックスを抱いていましたが、ピカソのおかげで和解します。
マリアデュエル: 花奈が憧れるアーティスト。

用語解説

河原部（かわらぶ）: ピカソが立ち上げた部活動。河原で絵を描くことを主な活動としています。
新聖鬼アレングリオン（しんせいきアレングリオン）: 作中に登場する架空の漫画作品。
ボリスワールド: 作中に登場する巨大テーマパーク。

単行本情報

第1巻：2009年2月4日発売
第2巻：2009年9月4日発売
第3巻：2010年6月4日発売

『幻覚ピカソ』は、少年漫画でありながら、人間の心の闇や成長、友情といった普遍的なテーマを描いた作品です。独特な世界観と魅力的なキャラクターたちが、読者の心に残る作品と言えるでしょう。

もう一度検索