幻魔大戦 (小説)

幻魔大戦

『幻魔大戦』は、平井和正によって創造された長編SF小説であり、1979年から角川書店の『野性時代』誌上で連載が開始されました。当初は、平井和正と石森章太郎が1967年に『週刊少年マガジン』で共作した漫画『幻魔大戦』を、小説として再構築するプロジェクトとして始動しました。しかし、執筆が進むにつれて物語は独自の発展を遂げ、漫画版とは異なる、新たなパラレルワールドを描くこととなりました。

作品は、しばしば『無印・幻魔大戦』、『小説決定版・幻魔大戦』、『決定版・幻魔大戦』、『野性時代版・幻魔大戦』、『角川幻魔』といった名称で呼ばれることもあります。また、直接的な続編として、『ハルマゲドン —第二次幻魔大戦—』が書き下ろしで刊行されており、本稿では同作品についても併せて解説します。

概要

『新幻魔大戦』における出来事の結果として、東丈や三千子へと繋がる家系が生まれました。この家系から、『少年マガジン』版の『幻魔大戦』、『真幻魔大戦』、そして本作の舞台となる世界へと物語が分岐していきました。

本作の舞台は、『少年マガジン版』と同じ1967年です。幻魔の地球侵略の危機を告げるエネルギー生命体フロイに応じ、ルナ王女が率いる幻魔に対抗する集団「大連盟」に召集された東丈の物語が展開されます。東丈は、『少年マガジン』版のような超能力戦士としてだけでなく、幻魔に対抗する組織「GENKEN」の主宰者としても成長していきます。

第1期は、『野性時代』誌（角川書店）にて1979年から1983年にかけて連載されました。当初は毎月、文庫1冊分の原稿が執筆され、雑誌掲載の翌月には角川文庫から発売されるという、驚異的なペースで刊行が進められました。この第1期では、全20巻が発行されています。

並行して、異なる出版社の雑誌で同時連載されていた『真幻魔大戦』とは、それぞれ独立した物語として進行しましたが、『真幻魔大戦』の作中で、両作品の位置関係が明確に説明されました。さらに、『ハルマゲドンの少女』が、両作品を繋ぐ橋渡し的な役割を果たしています。

第2期は、タイトルを『ハルマゲドン』（『ハルマゲドンの少女』とは異なります）と改題し、引き続き執筆されましたが、残念ながら未完のまま中断となりました。この第2期は、徳間書店から発行されたハードカバー本『平井和正ライブラリー』の第8集（1987年発売）に、書き下ろしの形で収録されました。

あらすじ

幻魔大戦

1967年、高校生の東丈は、突如として超能力に目覚め、幻魔と戦う宿命を背負うことになります。幻魔がニューヨークを壊滅させる事件に遭遇した丈は、東京に戻った後、人々に幻魔の脅威を知らせる活動を開始します。彼は高校の文芸部を基盤に、幻魔への対抗を目的とする「幻魔研究会」（通称「GENKEN」）を組織します。しかし、丈のもとに集まる「GENKEN」のメンバーは、彼の意図とは異なり、丈へのカリスマ的な帰依者集団としての様相を呈していきます。やがて丈は謎の失踪を遂げ、物語はGENKENのメンバーを中心に展開していきます。

『少年マガジン』版をベースとしながらも、物語は途中から独自の展開を見せ、超能力アクションから思索的なSFへと変貌を遂げていきました。

ハルマゲドン —第二次幻魔大戦—

1968年、東丈が失踪した後の世界が舞台となります。人々から崇拝される丈と「GENKEN」に対抗するため、かつて丈の弟子であった高鳥慶輔は、自らが主宰する団体を設立します。しかし、彼の救世主願望はエスカレートの一途を辿ります。一方、丈が残した「GENKEN」は、内部に深刻な問題を抱えていました。

『野性時代』版『幻魔大戦』の直接的な続編であり、全2部構成で展開されます。救世主の出現を切望する人々や、妖しい超能力者、霊感少女などが登場し、黙示録的な世界観が描かれています。しかし、物語は導入部分までしか進まず、作者自身の手によって執筆が中断されました。

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