庁令

庁令とは

庁令とは、府省の外局である庁の長官が制定する命令を指します。これは、内閣府設置法第58条第4項または国家行政組織法第13条第1項に基づき、他の法律の定めるところに従って発せられるものです。

概要

現在、海上保安庁令（海上保安庁法33条の2）のみが存在します。これに対し、同じく府省の外局である委員会が制定する命令は規則と呼ばれ、これらと庁令を併せて外局の規則と総称されます。

ただし、復興庁令は復興庁設置法第7条第3項を根拠とし、内閣総理大臣が発するものであり、通常の庁令とは異なります。また、宮内庁も外局ではありませんが、宮内庁法第18条第1項により準用される内閣府設置法第58条第4項に基づき、特別の命令を発することが可能です。これも「庁令」と呼べますが、発令根拠となる「他の法律」が定められていないため、実際に発令された例はありません。

効力

庁令は、法律の委任なしに罰則を設けたり、国民に義務を課したり、権利を制限する規定を設けることはできません（内閣府設置法58条5項で準用される同法7条4項、国家行政組織法13条2項で準用される同法12条3項）。

法形式上の優劣関係は以下の通りです。

憲法 > 条約 > 法律 > 政令 > 内閣官房令 = 内閣府令 = 省令 = 復興庁令 = デジタル庁令 = 外局の規則（規則・庁令）> 地方公共団体の条例 > 地方公共団体の規則等

海上保安庁令

2012年現在、国土交通省の外局である海上保安庁の長官が発する海上保安庁令（海上保安庁法33条の2）のみが現存します。

海上保安庁法第5条第28号では、文教研修施設（海上保安大学校および海上保安学校）の名称、位置、内部組織について定めることが委任されています。

これに基づき、以下の庁令が定められています。

「海上保安大学校の名称、位置及び内部組織に関する庁令」（昭和36年海上保安庁令第2号）
「海上保安学校の名称、位置及び内部組織に関する庁令」（昭和26年海上保安庁令第2号）
これらの一部改正のための海上保安庁令

物価庁令

かつては、経済安定本部の外局である物価庁の長官が発する物価庁令も存在しました。

例として、電気事業法30条1項に基づく電気自動車充電技術者検定規則（昭和24年通商産業省・物価庁令第1号）があります。

その他名称に「庁令」を含む命令

以下のものは、外局の規則としての庁令ではありませんが、名称に「庁令」を含んでいます。

府省令に準じるもの

復興庁令：内閣総理大臣が、復興庁設置法第7条第3項に基づき、復興庁の主任行政事務について法律や政令を施行するため、または特別の委任に基づいて制定する命令。
デジタル庁令：内閣総理大臣が、デジタル庁設置法第7条第3項に基づき、デジタル庁の主任行政事務について法律や政令を施行するため、または特別の委任に基づいて制定する命令。
総理庁令：内閣総理大臣が、行政官庁法第6条第1項に基づき、主任の事務について法律や政令を執行するため、または特別の委任に基づいて制定した命令。国家行政組織法の施行により廃止。
法務庁令：法務総裁が、法務庁設置法第2条第3項で準用される行政官庁法第6条第1項に基づき、主任の事務について法律や政令を執行するため、または特別の委任に基づいて制定した命令。国家行政組織法の施行により廃止。

地方行政機関が制定したもの

警視庁令：条例で定める以外の事項について、警視庁長官が制定した命令。
北海道庁令：条例で定める以外の事項について、北海道庁長官が制定した命令。
北海道支庁令：北海道支庁長官が制定した命令。
樺太庁令：樺太庁長官が制定した庁令。罰則は省令と同程度。
庁令（台湾）：台湾における命令で、内地の府県令に相当。台湾の地方単位「州」を置かない未開地域「庁」の長が定めるもの。罰則は府県令より軽い。
関東庁令：関東長官が制定した庁令。罰則は勅令と同程度で、緊急時には事後承認でより重い罰則を付すことが可能。
南洋庁令：南洋庁長官が制定した庁令。罰則は勅令と同程度で、緊急時には事後承認でより重い罰則を付すことが可能。

関連項目

行政立法
法令
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