広南府

広南府（こうなんふ）は、中国の歴史において、雲南省南部に位置した行政区画です。その歴史は明代に始まり、清代を経て中華民国初期まで続きました。現在の雲南省広南県と富寧県を中心とする地域を管轄していました。

明代の広南府

広南府の始まりは、1382年（明の洪武15年）に遡ります。この年、明朝はそれまで存在した広南西路宣撫司を改編し、新たに広南府を設置しました。広南府は雲南省に属し、その管轄下には富州が置かれました。この時期の広南府の統治は、儂氏（のうし）という土司（現地の有力者）が知府（地方官）を世襲する形で行われていました。土司制度は、中央政府が直接支配しにくい地域において、現地の有力者に統治を委ねることで、安定を図るための制度でした。

清代の広南府

清代に入ると、1661年（順治18年）に大きな変化が訪れます。清朝は、中央集権化を推し進める政策の一環として、「改土帰流」を実施しました。これにより、それまで土司が世襲していた広南府の統治は、中央政府から派遣された流官（任期付きの官僚）による統治へと移行しました。この時、広南府は依然として雲南省に属し、宝寧県と富州を管轄するようになりました。1900年（光緒26年）には、富州が富州庁へと改編されました。これは、行政区画の細分化と、より効率的な統治を目指した改革の一環と見ることができます。

中華民国初期と広南府の終焉

1913年、中華民国が成立すると、広南府は廃止されることになりました。しかし、広南府が完全に消滅したわけではありません。その管轄下にあった宝寧県は、広南県と改称され、また富州庁は富州県と改められました。さらに、1927年には富州県が富寧県と改称され、現在に至っています。

このように、広南府は明代から民国初期にかけて、その行政区画の形態や管轄地域、名称を変化させてきました。その歴史は、中国の地方行政制度の変遷を理解する上で重要な事例の一つと言えるでしょう。特に、土司制度から流官統治への移行は、中国中央政府による地方統制の強化を象徴する出来事でした。広南府の変遷は、単なる行政区画の変更にとどまらず、その地域の社会構造や政治状況の変化を反映していると言えるでしょう。

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