広島フォーク村

広島フォーク村の概要

広島フォーク村（ひろしまフォークむら）は、1968年11月に広島市内の3つのフォーク音楽団体が結束して設立されたアマチュアのサークルです。この団体は、日本のフォーク音楽の重要なルーツの一つとして位置づけられています。その存在は、広島市の市史にも記載され、地域の音楽文化における重要性が認識されています。

その歴史的背景

広島フォーク村の設立は、伊藤明夫、吉田拓郎、蔭山敬吾の3名を中心に、広島商科大学の学生たちによって行われました。このプロジェクトは拓郎の呼びかけに応じて始まり、当時の広島市内にあった喫茶店「朝日珈琲サロン」に各大学から代表者が集まりました。伊藤は、「広島フォーク村は大学サークルではなく、当時存在していた3つの軽[[音楽]]団体が、より自由な団体を作るために集まったもの」と語っています。

この団体を支援したのは広島楽器センターの波佐本保男店長です。彼は、音楽を通じて平和を広めたいという思いから楽器店を始め、時には学生たちを警察から守るなど、物心両面で広島フォーク村を支援しました。1960年代後半、日本全土では学園闘争が起きており、ビジュアルとメッセージ性を重視したフォークソングが多くの若者に影響を与えていました。

開村コンサートとその影響

1968年12月23日、広島市青少年センターで開催された開村コンサートでは、拓郎が顧問として参加しましたが、彼の魅力と才能は際立っており、実質的なリーダーとして広島フォーク村の人気を一手に引き受けました。拓郎はまだレコード化されていなかったにもかかわらず、広島のラジオで彼の楽曲がヒットし、他のアマチュアミュージシャンの間でも彼の曲をカバーする動きが出ました。

特に1970年は、拓郎が上智大学全共闘と共にアルバム『古い船をいま動かせるのは古い水夫じゃないだろう』を自主制作し、エレックレコードから全国リリースされるなど、広島フォーク村の存在が全国に知られるきっかけとなりました。このアルバムからは「イメージの詩」、「マークⅡ」、「にわとりの小さな幸福」といった曲が収録され、地域の音楽シーンに大きな影響を与えました。

広島フォーク村の動向は、全国に新たなフォーク村の設立を促し、特に大学生層における音楽活動の拠点として機能しました。その後も1970年6月には新宿厚生年金会館で旗揚げコンサートが行われ、東京に向けて広島フォークの波が広がりました。この時の盛況ぶりは、最盛期には500人以上の観客を集めたと言われています。

結成後とその後の展開

やがて、拓郎が東京に進出するにつれて広島フォーク村の熱気は後退し、1971年5月に一旦解散しました。しかし、メンバーたちはその後も音楽業界で活躍し続け、再結成も何度か行われました。広島フォーク村には村下孝蔵や上綱克彦、原田真二といった著名なミュージシャンも在籍しており、地域の音楽シーンにも新たな風を吹き込んでいました。

蔭山敬吾はこのフォーク村が「ポップ・ミュージックを愛する集団」であり、フォークやロック、R&B、ブルースなど様々な音楽ジャンルが共存しながら展開されていたことを指摘しています。広島フォーク村の活動は、地域音楽の草分けとしての重要性を示すものであり、メンバーたちの音楽的なアイデンティティを育んできました。

このような背景を持つ広島フォーク村は、2007年から2008年にかけて放送されたCS番組『なぎら健壱の音楽紀行「フォークの旅路」』においても取り上げられ、その存在を再評価されています。

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