広島大本営

広島大本営（ひろしまだいほんえい）は、1894年に勃発した日清戦争において、日本の戦争指揮の中心となった施設です。この大本営は、広島県広島市にある広島城の跡地に設置され、戦争の拠点として重要な役割を果たしました。大本営の設立は1893年の「戦時大本営条例」に基づいており、日清戦争では日本陸軍の指揮を執るために初めて設けられました。

日清戦争の初期、最初の大本営は1894年6月に東京に設置されましたが、戦局の進展に伴い、8月5日に皇居内に移転。その後、広島市に移されました。広島市が選ばれた理由には、当時の鉄道網の終点であったことや、兵站の中心となる宇品港の存在がありました。具体的には、9月13日に大本営が宮中から広島に移ることが決まり、明治天皇も15日にここに移動。明治天皇の行宮としての役割も担ったため、施設は重要視されました。

この大本営には、明治天皇の居場所として清風館が指定され、戦場の状況を見守りながら227日間にわたり指揮を執ります。1895年5月30日、日清講和条約（下関条約）調印後に、明治天皇は東京へ戻りますが、大本営はしばらく広島に留まり、台湾の統治機構整備など戦後処理にあたります。最終的に1896年4月1日に解散し、その歴史を終えました。

興味深いことに、1894年10月には広島市で第7回帝国議会が開催されました。これは、立法・行政・軍事の最高機関が一時的に東京以外の場所に集まった珍しい事例です。広島市は臨時の首都機能を果たすこととなり、これらの出来事は日本の明治期における重要な節目となりました。

大本営の施設自体は、元々火災で消失した本丸御殿の跡地に1877年に建設されたもので、木造の洋風建築でした。この建物1階には大臣室や侍従職室があり、2階には天皇の御座所となる部屋が配置されていました。明治天皇はここで夜遅くまで政務をこなすなど、質素な生活を送りながら精力的に業務を遂行しました。

また、大本営の解散後、1926年には国の史跡として指定され、その後も広島城は一般公開されるなどし、歴史的な遺構としての価値が認識されてきました。しかし、1945年の原爆投下により、その建物は完全に壊滅してしまいました。この事件の影響を受けた跡地には、現在でもわずかな基礎や記念碑が残るのみです。

加えて、大本営の周辺には昭憲皇太后の御座所や桜の池なども含まれ、歴史の色を添えています。大本営の跡地は、当時の出来事を物語る重要な証として現在も残り続け、水面下で様々な文化的な意義を持っています。

1968年には広島市が大本営を復元する計画を持ち上げましたが、意見の相違から実現には至りませんでした。大本営は、単なる軍事的な記憶だけでなく、近代日本の歴史を紐解く重要な地点となっています。

もう一度検索