広島女子高等師範学校

広島女子高等師範学校

広島女子高等師範学校（ひろしまじょしこうとうしはんがっこう）は、1945年（昭和20年）4月に広島県広島市に設立された官立の女子教員養成機関です。略称は「広島女高師」（ひろしまじょこうし）と呼ばれていました。ここでは、前身である山中高等女学校（やまなかこうとうじょがっこう）についても解説します。

概要

広島女高師は、明治時代に設立された山中高等女学校（略称：山中高女）を前身としています。山中高女は、第二次世界大戦中に国に寄附され、その資産を基盤として官立の広島女高師が設立されました。

東京女子高等師範学校、奈良女子高等師範学校に次ぐ、3番目で最後の女子高等師範学校として、理科・家政科・体育科を設置していました。附属学校として、広島女子高等師範学校附属山中高等女学校（現在の広島大学附属福山中学校・高等学校）がありました。

しかし、設立から間もない1945年8月6日、広島市への原子爆弾投下により、広島大学の前身校の中で最も多くの犠牲者を出すこととなりました。

戦後、広島大学教育学部福山分校の前身となり、卒業生によって同窓会「尚志会」が結成されています。この尚志会は、旧制学校時代から続く広島大学文学部・教育学部・理学部の同窓会でもあります。

沿革

前史：山中高女時代

広島女子高等師範学校の直接の前身である山中高等女学校は、1887年（明治20年）12月6日に私立広島高等女学校として創立されました。広島県知事・千田貞暁および官民有志によって設立されたもので、全国で3番目、広島県下では初の高等女学校でした。設立時の校主は弁護士の山中正雄、初代校長には千田そも子が就任しました。

1901年4月には県立広島高等女学校の設立認可に伴い、私立山中高等女学校に改称。1908年8月には山中高等女学校と再改称しました。1921年（大正10年）10月には財団法人の設立認可を得て財団法人山中高等女学校が発足し、学校運営の母体となりました。1940年頃には、山中トシ理事長により、山中高女を国に寄付する動きが始まりました。

官立広島女高師設立以降

山中高女からの寄付の申し出を受け、文部省は広島に第3の官立女子高等師範学校を設置する予算案を作成。1944年12月には広島女子高等師範学校の設置申請が閣議で受理されました。翌1945年3月末には財団法人山中高等女学校から校地・校舎が国に寄附され、財団法人は解散。（私立）山中高等女学校は廃止されました。

1945年4月1日、広島女子高等師範学校が設立され、戦時下の中等理科教員育成政策に基づき理科・家政科・体育科が設置されました。山中高女の職員・生徒は「広島女子高等師範学校附属山中高等女学校」に移行。7月21日には入学式が挙行され、全国から集まった81名が入学しました。

しかし、初授業が予定されていた8月6日、原爆投下により校舎は全壊・焼失し、登校していた生徒・教職員に犠牲者が出ました。また、建物疎開作業に当たっていた山中高女生徒のほとんどが被爆により亡くなりました。

9月から12月にかけて、女高師・山中高女は郊外へ疎開・移転し、最終的には広島県賀茂郡安浦町に統合移転しました。

1949年5月31日、国立学校設置法公布により広島大学が発足すると、女高師・山中高女は広島大学に包括され広島大学広島女子高等師範学校（および同附属山中高等女学校）と改称し、教育学部安浦分校（のち福山分校）の構成母体となりました。1951年3月には附属山中高女が廃止され、1952年3月には女高師最後の卒業式が行われ、広島女高師は廃止されました。

原爆による被害

1945年8月6日の原爆投下により、広島女高師と附属山中高等女学校の校舎は大破・倒壊し全焼しました。唯一のRC造建築であった体育館も大破し、内部は全焼しました。当日、授業のために登校していた生徒81名全員が被爆し、校舎の倒壊で下敷きになった生徒もいました。建物疎開作業に動員されていた山中高女の生徒333名は、熱線・爆風・放射線の直撃を受け、1名を残して全員が亡くなりました。

広島女高師および附属山中高女は、広島大学の旧制前身校の中で最も多くの被爆死者を出した学校となりました。

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