広島新交通システム橋桁落下事故

広島新交通システム橋桁落下事故について

1991年3月14日、広島市安佐南区で発生した広島新交通システムに関連する事故は、当時建設中であった広島高速交通広島新交通1号線（アストラムライン）の工事現場にて、仮設の鋼鉄製橋桁が落下したものである。この事故により、14人が命を失い、さらに9人が重軽傷を負った。事故の影響は広範且つ根深いもので、今後の安全対策の重要性を再認識させるものであった。

事故の概要

事故は午後2時5分ごろ、広島市の上安2丁目において起きた。作業員たちは、長さ63メートル、幅1.7メートル、厚さ2メートル、重さ60トンの橋桁を設置しようとしていた。作業中、橋桁は10メートル下にある県道38号安佐安古市線へと落下してしまった。この衝撃で、橋桁は県道を走行していた11台の車両を直撃し、多数の死傷者が発生した。火災も引き起こされ、一部の乗用車は圧縮されるなど、惨状が広がった。救助活動は迅速に行われたものの、すでに多くは即死状態であった。

事故の原因

事故の原因は、多くの要素に起因している。広島県警察は業務上過失致死傷の容疑をもとに調査を開始し、作業の不備が明らかとなった。現場の設置基盤が不十分だったため、適切な工法を選択できず、作業ミスが引き起こされた。特に、架設用として使用されたH形鋼の配置に誤りがあったことで、荷重が不均衡になった結果、橋桁が急に落下してしまった。

作業の監視体制にも問題があり、実行責任を持つべき者が現場に不在であったり、無経験の若い作業員が危険な作業を行っていたことが重なり、事故につながった。また、交通規制を行わなかったことも影響し、事故現場付近での交通混雑が深刻だった。

裁判とその後

事故の責任は法的に追求され、関係者が起訴された。広島地方裁判所では、現場代理人及び工事関係者に対する有罪判決が下され、厳重な処分が科された。広島市の刑事責任は問われなかったが、民事訴訟においては損害賠償責任が認められ、裁判は長引く結果となった。

事故の教訓と影響

今回の事故は、工事現場の安全管理体制の重要性を浮き彫りにし、以後の工事作業における交通規制や作業員の安全教育が徹底される契機となった。また、広島市は工事開始時の方針を見直し、交通規制を強化した。事故現場に慰霊碑が設けられ、毎年追悼行事が行われている。

この事故を教訓に、全国で工事現場における安全対策が見直され、適切な施策が講じられるようになった。事故そのものが多くの命を奪った悲劇であったが、その後の改革によって再発防止に繋がる重要な一歩となった。

もう一度検索