広島県立賀茂高等学校

広島県東広島市西条西本町に所在する、公立の高等学校です。全日制の普通科に加え、定時制の普通科も設置しており、地域では親しみを込めて「賀茂」「賀茂高」あるいは「賀茂高校」と呼ばれています。

概要

本校の校章は、そのデザインに深い歴史的背景を持ちます。学校が位置する地域が、かつて京都の賀茂神社の荘園であったことにちなみ、同神社の神紋である賀茂葵が意匠に取り入れられています。校章制定にあたっては、京都の賀茂神社を訪れ、神紋の使用許可と、その由来となった葵の草を賜ったと伝えられています。また、学校の正式な創立記念日が特定できないため、賀茂神社の承諾を得て、同神社で催される祭礼である葵祭に合わせ、毎年5月15日を開校記念日としています。校歌の作詞は葛原しげる、作曲は下総皖一が手掛けました。

近年における本校の教育方針や位置づけには変化が見られます。かつては広島県教育委員会によって進学指導重点校に継続して指定されていましたが、2009年度以降はこの指定から外れています。しかし、2010年度には同委員会からチャレンジハイスクールの指定を受け、新たな教育への取り組みを進めています。さらに、2014年度からは4年間にわたり文部科学省の英語教育強化地域拠点事業の指定校となり、英語教育の充実に力を入れました。2015年度には、広島県教育委員会の高等学校課題発見・解決学習推進プロジェクト（活用コアスクール）の指定を受けるなど、教育内容の改革・充実に積極的に取り組んでいます。

沿革

本校の歴史は明治時代に遡ります。1906年（明治39年）6月には私立西条女学校として設立が認可されました。その後、1911年（明治44年）2月に私立西条実科高等女学校へと改称。1923年（大正12年）3月31日には町村組合立広島県賀茂高等女学校となり、地域に根差した教育機関としての歩みを進めます。1926年（大正15年）4月1日、県へ移管され、広島県立賀茂高等女学校となりました。

戦後の学制改革を経て、1948年（昭和23年）4月1日に広島県賀茂高等学校となります。翌1949年（昭和24年）4月30日には広島県西条農業高等学校と合併し、広島県西条高等学校として再編されました。しかし、1953年（昭和28年）4月1日には、再び広島県西条高等学校から広島県賀茂高等学校へと名称を改め、農業課程は広島県西条農業高等学校として分離独立しました。

その後の変遷として、1965年（昭和40年）4月1日には久芳分校が廃止され、新設された広島県賀茂北高等学校に統合されました。1968年（昭和43年）4月1日には定時制課程（夜間）普通科を新設し、同年10月1日には現在の名称である広島県立賀茂高等学校に改称しています。1971年（昭和46年）4月1日には黒瀬分校が広島県立黒瀬高等学校として独立しました。

学科の改編も行われました。1990年（平成2年）4月1日に家政科を生活科学科に改めましたが、2005年（平成17年）4月1日をもって生活科学科の新入生募集を停止し、同科は総合技術高校へ再編統合されることとなりました。最終的に、2007年（平成19年）3月31日をもって生活科学科は閉科しました。

創立100周年は2006年（平成18年）に迎えられ、10月に記念行事が実施されました。近年では、2013年（平成25年）3月に韓国仁川市のミチュホル外国語高等学校と姉妹校提携を結び、同年8月22日には広島県内の高校としては13校目となるユネスコスクールに認定されています。

教育と活動

教育課程は3学期制を採用しており、週に2回は7時間授業を実施しています。定時制課程は4年間で卒業となります。東広島市の中心部に位置する地の利を生かし、広島大学、広島国際大学、近畿大学など近隣の大学との高大連携を推進しています。また、国際協力機構（JICA）やひろしま国際センター（HIC）といった国際交流機関との連携も深め、実社会で役立つ「高度な実践知」や、国際舞台で活躍できる「グローバル人材」の育成に力を入れています。

校風

本校の校是は「信・敬・愛」です。長年にわたり、自由な校風が受け継がれていると言われています。その歴史の中で、広島県内の他の高校に先駆けて、生徒の主体性を尊重する取り組みが見られました。例えば、制帽の自由化、校内での土足化、女子制服のベストの前ボタン化などが比較的早期に導入されています。現在の制服であるブレザー化も、生徒からの発案によって県内では早い時期に実現しました。制服に関しては、先代の制服導入から数年後、近隣の広島県立賀茂北高等学校が配色が酷似した新制服に移行したことで、東広島市中心部では特に生徒数の多い賀茂高校の生徒と誤認されるといった状況が生じたこともあります。

生徒の自発的な活動としては、1984年には硬式野球部が設立されました。1998年秋に甲子園出場経験を持つ中村信彦教諭が監督に就任して以降、着実に力をつけ、春・秋の県大会で準優勝するなど、県内上位に進出する常連校となりました。これまで2度、中国大会にも出場しています。しかし、念願の甲子園出場は果たしておらず、最高位は2003年と2005年の選抜高等学校野球大会における補欠校となっています。中村教諭は2007年に他校へ異動しました。

進路

旧制中学校が存在しなかった賀茂地域において、古くから進学校として重要な位置を占めてきました。過去には東京大学や京都大学への合格者を輩出するなど、県内でも有数の公立進学校として知られていました。しかし、近年は近畿大学附属広島高等学校東広島校や広島県立広島高等学校などの新しい進学校の台頭もあり、かつての最盛期と比べると、その進学実績には変化が見られます。2019年3月卒業生の進学実績では、国公立大学へ90名、そのうち広島大学へは16名、県内国公立大学へは44名が合格しています。

著名な関係者

本校からは、大庭みな子（小説家、芥川賞作家）、海田智行（プロ野球選手）などの著名な出身者が輩出されています。

交通アクセス

JR山陽本線の西条駅が最寄り駅です。

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