葛原しげる

葛原 しげるについて

葛原しげる（くずはら しげる、1886年6月25日 - 1961年12月7日）は、日本の童謡詩人、童謡作詞家、童話作家、そして教育者として広く知られ、多くの作品が今でも愛されています。彼は福山市の名誉市民でもあり、故郷の教育にも大きく貢献しました。特に彼の名前には正字『𦱳』があり、普段は「しげる」とひらがなで呼ばれることが多いため、注意が必要です。

経歴

しげるは広島県安那郡八尋村（今の福山市神辺町八尋）で生まれました。幼少期から家族には芸術的な才能があり、祖父の葛原勾当は盲目の琴の名手でした。母の家系も旧知の有力者であり、文化に対する関心が高まる環境があったようです。1903年に福山中学校（現・福山誠之館高校）を卒業後、東京高等師範学校の英語科に入学し、在学中に名曲に詩をつける活動を始めました。

教員としてのキャリアを積む中で、しげるは九段精華高等女学校や跡見女学校で教鞭を執りながら、雑誌『少年世界』などの編集にも参加しました。明治末期には、当時の『尋常小學唱歌』が子どもたちの心情や発達段階にそぐわないとの批判に応え、新たな音楽教育の形式を模索していました。小松耕輔や梁田貞らとともに「大正幼年唱歌」をはじめとする作品を刊行し、ここから童謡運動への道が開かれます。

また、宮城道雄との出会いが彼の創作活動に大きな影響を与えました。宮城との共同作品は多岐にわたり、家庭向けの子供の歌を数多く手がけました。故郷の教育に尽力しながら、しげるは当時の日本音楽界において重要な役割を果たしました。

代表作と影響

葛原の代表作には「夕日」があり、これは洋楽の童謡として広く知られています。在りし日の経験から生み出されたこの歌は、「きんきんきらきら」という当初の詩が「ぎんぎんぎらぎら」と変更されることで、より力強い生命力を持つ作品となりました。1921年にはこの曲がレコードとして発表され、瞬く間に全国的に名が知られるようになりました。また、作詞した童謡は約4000篇にも及ぶとされ、他に「とんび」、「白兎」、「たんぽぽ」、そして「村祭」など、多くの作品があります。

しげるの理念は、子どもたちのための音楽に大人の趣味を持ち込まないことでした。これを守り続けるため、同時代の作家たちと活発な論争も繰り広げました。一方で、教育者としての彼は、「ニコピン先生」と親しまれ、子どもたちに明るい未来を想像させるメッセージを伝え続けました。

晩年と死後の影響

1961年に亡くなるまで、しげるは地元の教育に尽力し続け、教育者としての地位を確立すると共に、彼の楽曲は学校や合唱団によく歌われました。彼の死去後も、地元では「ニコピン忌」と呼ばれ、毎年命日には彼の業績を称えるイベントが行われ、地域社会の絆を深める機会となっています。また、現在は「葛原文化保存会」が彼の遺徳を顕彰し、文化を継承する努力を続けているのです。

このように、葛原しげるの作品や教育への貢献は、彼の名前を今に残し、次世代の創作活動にも影響を与えています。

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