広島県道372号林御寺線

広島県道372号林御寺線

広島県道372号林御寺線は、瀬戸内海のほぼ中央部に位置する生口島（いくちじま）を通る一般県道です。この路線は、島の東部に位置する尾道市瀬戸田町林地区を起点とし、島の西部に位置する同市瀬戸田町御寺地区を終点としています。特筆すべきはその経路で、東西に細長い生口島を横断する県道としては、この林御寺線が唯一の存在であり、島内の主要な交通軸の一つとしての役割を担っています。

概要と路線データ

この県道は、広島県尾道市内の単一の自治体域のみを通過する路線です。総延長は4.17キロメートルと比較的小規模ながら、生口島における東西方向の重要な交通路を形成しています。

起点：路線の始まりは、尾道市瀬戸田町林地区に設けられた林交差点です。ここでは、生口島をほぼ一周する主要地方道である広島県道81号生口島循環線と接続しており、島内におけるアクセスポイントとして機能しています。
終点：終点は、尾道市瀬戸田町御寺地区にある御寺交差点です。ここでは、生口島南部の海岸線沿いを通る国道317号と交差しており、尾道方面や今治方面への接続を可能にしています。

歴史

広島県道372号林御寺線が一般県道として公的に認定されたのは、1974年（昭和49年）3月22日のことです。当時の広島県による告示第230号によって、この路線が正式に県道として定められました。これは、生口島内の交通網整備が進められる中で、東西を結ぶ基幹道路の必要性が認識された結果と言えるでしょう。

その後の大きな変化としては、地域の行政区分の変更が挙げられます。2006年（平成18年）1月10日、この県道が全線通過していた豊田郡瀬戸田町が尾道市に編入合併されました。これに伴い、路線の全区間が尾道市の市域を通過する形となり、起終点の所在地を示す地名も「豊田郡瀬戸田町」から「尾道市瀬戸田町」へと正式に変更されています。

路線状況

路線の大部分は単独区間ですが、一部重複している区間が存在します。尾道市瀬戸田町林の区域内において、広島県道466号向島因島瀬戸田自転車道線と一時的に経路を共有しています。この自転車道線は、瀬戸内しまなみ海道と並行する自転車歩行者専用道路「瀬戸内海横断自転車道」の一部であり、サイクリストにとっても重要なルートとなっています。

道路施設

路線の主要な施設として、生口島を横断する際に通過するトンネルがあります。生口隧道（いくちずいどう）と命名されたこのトンネルは、延長が150メートルあり、尾道市瀬戸田町林と尾道市瀬戸田町御寺を結ぶこの県道において、地形的な障害を克服する重要な構造物です。この隧道を通過することで、島内を効率的に横断することが可能となっています。

地理

広島県道372号林御寺線が通過する自治体は、前述の歴史的な経緯を経て、現在は広島県尾道市のみとなっています。路線は生口島の比較的平坦な部分を東西に横断しており、沿線には住宅地や田畑などが点在しています。主な交差点としては、起点である林交差点で広島県道81号生口島循環線と、終点である御寺交差点で国道317号とそれぞれ接続しています。

沿線には、起点の林交差点付近に尾道市立瀬戸田中学校があり、地域の教育施設へのアクセス路としても利用されています。この県道は、生口島内の住民の生活を支えるとともに、島を訪れる人々にとっても、島内の移動において重要な役割を果たしています。生口島を横断する唯一の県道として、地域交通ネットワークの中で独自の地位を占める路線と言えるでしょう。

広島県内には数多くの県道が存在しますが、この広島県道372号林御寺線は、島嶼部における横断路線という点で特徴的な存在です。その短い総延長の中に、地域の交通を支える重要な機能が集約されています。

（参照項目：広島県の県道一覧）

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