広東十三行

広東十三行とは

広東十三行（カントンじゅうさんこう、英語：Thirteen Factories）は、清朝時代に広州で外国貿易を独占した特権的な商人団の通称です。洋貨行、洋行、行商などとも呼ばれました。この組織は、清朝の貿易政策において重要な役割を果たし、中国と西洋の経済交流の要となりました。

起源

1685年、康熙帝が海外貿易を許可した際、広州には粤海関が設置されました。翌年には、牙行（仲買商）である広東十三行が指定され、粤海関監督の下で貨物の集散や関税徴収を担当しました。これが広東十三行制度の始まりです。

「十三行」という名称ですが、必ずしも13の商人グループで構成されていたわけではありません。当時の広州では、数十の牙行が珠江沿いに倉庫や店舗を構えていました。これらの建築物が「十三行」と呼ばれるようになり、後に商人たちも同様に呼ばれるようになりました。

公行の結成

1720年、粤海関監督は有力な16の牙行を選抜し、貿易額に応じた責任を負わせました。この時、東インド会社の記録には公行が成立したと記されていますが、この制度は多くの牙行の反対にあい、翌年には解散しました。

その後、1726年に雍正帝の許可を得て、有力な6つの牙行が再び選ばれ、外国貿易を独占しました。これらの6つの牙行は保商と呼ばれ、監督に対する責任を負いました。一般の牙行は、彼らの保証の下で貿易に参加しました。

1757年、外国との貿易港が広州一港に限定されると（広東システム参照）、保商による貿易独占は継続されました。1760年には、広州の牙行が外洋行（ヨーロッパ船担当）、本港行（タイ船担当）、福潮行（潮州船・福建船担当）に分けられ、潘振成を中心として9つの外洋行が新たに組織されました。外洋行は、関税や貿易に連帯責任を負い、外交交渉も担当するようになりました。この時を以て、公行が成立したとされています。

盛衰

1740年以降、取引に付加税を課して行用銀を積み立て、行商の負債返済や関税納入のための基金としました。これにより、多くの行商が関税の遅延や資金不足で倒産していた状況が改善され、19世紀初頭にかけて公行は全盛期を迎えました。

広東十三行は、茶や陶磁器を輸出し、銀貨や雑貨を輸入することで巨万の富を得ました。しかし、アヘン貿易が始まると、その取り扱いを巡って次第に衰退に向かいました。清朝政府によるアヘン禁止後、アヘン貿易を正規貿易として扱うことができなかったため、公行の経営は悪化しました。

アヘン戦争後の1842年、南京条約によって公行による外国貿易の独占は廃止され、広東十三行の歴史は幕を閉じました。

その他の役割

1757年以降、広東十三行は、日本の出島と同様に、中国国内における西洋への唯一の窓口となりました。西洋の軍備や医術などを国内に紹介したほか、怡和行の伍崇曜（伍敦元の息子）は『粤雅堂叢書』を、同文行の潘仕成は『海山仙館叢書』を編纂しました。これらの書物は、当時の文化交流の一端を示す貴重な資料となっています。

主な公行

怡和行の伍氏（Howqua）: 1783年に伍国瑩が創業し、1803年に伍秉鑑（伍敦元）が後を継ぎました。彼の経営のもとで、広州で最も成功した商会の一つとなり、同文行に代わって十三行のリーダーとなりました。また、イギリス東インド会社の最大の債権者でもありました。伍家の資産は、2600万銀元に達したとされています。怡和行の繁栄は西洋でも有名であり、ジャーディン・マセソン商会は1842年に中国語名を「渣甸洋行」から「怡和洋行」に変更しました。
広利行の盧氏（Mowqua）
同文行の潘氏（Puankhequa）
東興行の謝氏（Goqua）
天宝行の梁氏（Kingqua）
興泰行の厳氏（Sungqua）
中和行の潘氏（Mingkua）
順泰行の馬氏（Saoqua）
仁和行の潘氏（Puanhaekwanqua）
同順行の呉氏（Samqua）
孚泰行の易氏（Chingqua）
東昌行の羅氏（Lamqua）
安昌行の容氏（Takqua）

参考文献

増井経夫『清帝国』（講談社、1974年）

関連項目

海禁
広東システム

もう一度検索