広沢瓢右衛門

広沢 瓢右衛門の生涯と業績

広沢 瓢右衛門（ひろさわ ひょうえもん）は、1897年に大阪市浪速区で生まれ、本名は小島美士五郎です。浪曲家としての彼の人生は85年の長きにわたります。彼の実の兄は、浪曲師として名を馳せた3代目広沢当昇です。

幼少期と浪曲との出会い

父は「床亭」と呼ばれる理髪店を営んでおり、瓢右衛門は幼少期から商売場に出入りしていました。尋常小学校を卒業した後、堺市の理髪店で修業を積む傍ら、兄の影響を受けて浪曲に興味を持ち始めます。兄が浪曲師として活動する姿を見ているうちに、自身も浪曲の道を選びました。13歳で上京し、当時の浪曲師である広沢当円の門下に入ったことで、彼の運命は大きく変わります。

1912年には、桃中軒雲右衛門にちなみ「広沢瓢右衛門」と改名し、本格的に浪曲師としての活動を始めました。彼は、地方興行を中心に全国を巡り、様々な一座で公演を行うようになります。しかし、長い旅路の中で一時は半引退の時期を迎え、スナックの経営や雑貨店、さらには映画館などさまざまな職業に携わる生活を送ります。

戦後の復帰とメディアでの活躍

第二次世界大戦後、彼は友人や後輩からの勧めを受けて再び浪曲の世界に戻ります。80歳近くのとき、朝日放送の『和朗亭』に出演し、注目を集めるようになりました。この番組では彼の魅力が視聴者に伝わり、以降、テレビやラジオにも積極的に出演することになります。特に『悪声伝』というドキュメンタリー番組が放送された際には、広沢瓢右衛門の特異な声と芸が多くの人に記憶されることになります。

代表的な演目と評価

瓢右衛門が数多くの演目を披露してきた中で、特に「雪月花三人娘」、「英国密航」、「太閤記」などが彼の代表作として知られています。1970年代後半には、多くの報道やメディアで取り上げられることがあり、1974年には大阪府民文化賞を受賞、1979年には上方お笑い大賞の功労賞を受賞するなど、その業績が高く評価されました。

テレビドラマとCDのリリース

瓢右衛門は、テレビドラマにも出演し、「現代浮かれ節考」や「なにわの源蔵事件帳」などに登場しました。さらに、数々のオリジナルレコードも発表しており、なかでも「翔んでまわって瓢右衛門」や「浪花のじいちゃん瓢漂記」といったアルバムは今でも聴かれ、多くのファンに愛されています。

略歴と影響

広沢瓢右衛門は、浪曲の伝統を復興させただけでなく、新しい世代にもその技術や魅力を引き継ぐ重要な役割を果たした浪曲師でした。彼の豊かな表現力とユニークな声は長い間多くの人々に愛され、今後も多くの人に語り継がれることになるでしょう。その生涯は、浪曲の未来を担う多くの後進たちにとって、強く影響を与えるものとなりました。

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