和朗亭

『米朝ファミリー和朗亭』：昭和の大阪演芸を彩った名番組

1974年7月6日から1976年3月27日まで、朝日放送（ABC）で放送された演芸番組『米朝ファミリー和朗亭』。全91回に渡り、多くの視聴者を魅了したこの番組は、大阪弁の「笑ろてんか（笑ってください）」と寄席の名称を組み合わせたタイトルが示す通り、上方落語を中心に据えつつ、漫才、浪曲、講談など、多様な演芸を織り交ぜたバラエティ豊かな内容が特徴でした。

番組の魅力：時代を超える芸の競演

番組の最大の魅力は、出演者の顔ぶれです。桂米朝を席亭に、笑福亭松鶴、桂春團治、桂小文枝（後の5代目桂文枝）、桂枝雀といった上方落語の巨匠に加え、中田ダイマル・ラケット、横山ホットブラザーズ、Wヤング、レツゴー三匹など、当時人気を博していた漫才師たちが華を添えました。

さらに、柳家三亀坊や広沢瓢右衛門といった、既に引退していたベテラン芸人たちも出演。彼らの貴重な芸を再び見ることができる貴重な機会となり、幅広い世代の視聴者から支持を集めました。若手芸人の登竜門としての役割も果たしており、『ヤング和朗亭』という深夜番組では、オーディションで選ばれた若手芸人たちが活躍しました。

明治・大正・昭和の大阪寄席を再現したこだわりのスタジオセット

番組のもう一つの魅力は、そのセットです。林家とみが保存していた史料をもとに、かつて存在した大阪の寄席「紅梅亭」を忠実に再現したスタジオは、畳敷きの客席、お茶子、下足番、お囃子と、当時の寄席の雰囲気を完璧に再現していました。収録前には観覧客に菓子が配られ、客席への出入りシーンも放送されるなど、細部へのこだわりが感じられました。このセットは番組終了後も保存され、『ざこば・鶴瓶らくごのご』や他局の『平成紅梅亭』でも活用されています。

番組オリジナルグッズとして花札や手拭が制作され、手拭は観覧客に配られました。花札のデザインはイラストレーターの成瀬國晴が担当するなど、番組への力の入れようが伺えます。

さまざまな特集と豪華ゲスト陣

番組では「おーるど寄席」「民謡特集」「砂川捨丸三周忌」といった、特定のテーマに焦点を当てた特集も組まれていました。初回放送では、3代目笑福亭仁鶴の落語、中田ダイマル・ラケットの拳闘漫才、平和ラッパの座布団廻しなどが放送されました。

また、芸人だけでなく、秋田實、吉田留三郎、長沖一、小沢昭一といった評論家や、中田つるじらお囃子も出演。多角的な視点から演芸の魅力を伝えることで、より深い番組内容を実現していました。

放送とその後

『米朝ファミリー和朗亭』は、土曜日の正午から放送され、当初は40分番組でしたが、TBSなど他局とのネットワーク放送も行われていました。腸捻転解消後、ABC・NET系（ANN）ではローカルセールスとなり、近畿広域圏以外では番組販売での放送となりました。

番組は終了しましたが、DVD『なつかしの昭和爆笑漫才〜天国の笑星〜』や『松竹名人会』に収録された映像を通じて、その名場面を今も見ることができます。『米朝よもやま噺』でプロデューサーの池田幾三が番組の思い出を語るなど、現在でもその人気は語り継がれています。

『米朝ファミリー和朗亭』は、単なる演芸番組ではなく、昭和の大阪演芸文化を伝える貴重な記録であり、多くの視聴者に笑いと感動を与え続けた、忘れられない番組と言えるでしょう。

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