庄司浅水

庄司浅水

庄司浅水（しょうじ せんすい、1903年11月10日 - 1991年9月7日）は、日本のノンフィクション作家、書誌学研究家として著名な人物です。ミズノプリンティングミュージアムの名誉館長も務め、日本出版学会、日本ペンクラブ、グロリアクラブの会員でもありました。元京都外国語大学専任講師という経歴も持ち、書物研究のかたわら、世界各地の奇談を紹介することで広く知られています。

生涯

宮城県仙台市に生まれ、本名は喜蔵でした。三田英学校（現在の錦城学園高等学校）を卒業後、1925年に南葵音楽文庫に勤務しました。1929年には、ぐろりあそさえてから処女作とも言える『書籍装釘の歴史と実際』を刊行。翌年には装釘同好会を結成し、1931年には佐々木幸四郎、斎藤昌三らと共に雑誌「書物展望」を創刊しました。また、書誌出版を目指してブックドム社を設立し、自著である『書物の敵』『書物の話』『典籍随筆 蠧魚無駄話』や、徳富蘇峰の『愛書五十年』などを出版しました。さらに、雑誌「書物趣味」を主宰するなど、出版文化の発展に大きく貢献しました。

1935年には東京印刷工業組合書記に就任しますが、1936年に辞職。1939年、共同印刷総務部に籍を置き、社内報やPR誌「いんさつ」の編集、渉外・広報を担当し、初代の労務課長も務めました。1944年には凸版印刷に転じ、勤労課長となります。1945年3月の本社罹災後は、郷里に近い宮城県古川町の兵器部品製造工場の庶務課長となり、終戦を迎えました。戦後は板橋工場製本課長となりましたが、1948年に退社しました。

東京文理科大学内にあった芸術学会の機関誌「スクールアート」の編集発行、美術研究参考書の発行を主眼とした芸術科学社創立に携わりましたが、経営が思わしくなく、著述業に専念することとなりました。

1951年、ロバート・リ Ripleyーの『信じようと信じまいと 世界中のうそのようなほんとうの話』を翻訳して以来、世界の奇談珍談などのノンフィクション分野の著作を数多く発表しました。これらの作品は、彼の博識と独特の視点によって、多くの読者に愛されました。

主な著作

庄司浅水の著作は、書誌学とノンフィクションの二つの分野に大きく分けられます。

書誌学

『書籍装釘の歴史と実際』（1929年）
『書物の話』（1931年）
『書物のはなし 語りべから現代の書物まで』（1956年）
『本の文化史 ブック・アラカルト』（1963年）
『紙魚のたわごと』（1966年）
『本の世界』（1970年）
『愛書六十五年 一書物人のメモの中から』（1983年）
『書物よもやま話』（1986年）
『定本庄司浅水著作集 書誌編』全14巻（1979年 - 1983年）

ノンフィクション

『世界の奇談』（1958年）
『海の奇談』（1961年）
『世界の秘話』（1962年）
『世界の怪談』（1964年）
『世界の秘境』（1965年）
『世界の魔の海』（1965年）
『世界の驚異をたずねて』（1965年）
『世界の怪奇ミステリー』（1973年）
『なぞ驚異 七つの世界の七不思議』（1974年）
『世界の怪奇』（1975年）
『庄司浅水ノンフィクション著作集』全12巻 （1987年 - 1988年）
『世界の七不思議』
『世界の奇談』
『世界の奇跡』
『世界の怪奇物語』
『世界の秘話』
『世界海の秘録』
『世界奇談千夜一夜』
『世界のミステリー』
『世界残酷物語』
『世界の怪談』
『世界の五大事件』
『世界の怪事件』

これらの著作からもわかるように、庄司浅水は書物に関する深い知識と、世界各地の不思議な物語に対する強い興味を持っていました。彼の作品は、今もなお多くの読者に読まれ続けています。

浅水文庫

庄司浅水は、自身が所有する蔵書を「浅水文庫」と呼んでいました。その中にはキリスト教文献も含まれており、一部は古書店を経て立教大学のコレクションに収蔵されています。インキュナブラであるトマス・ア・ケンピスの『著作集』や、グーテンベルク聖書（零葉1枚）、石川啄木の署名がある明治時代の福音書なども含まれており、貴重なコレクションとして知られています。

庄司浅水の業績は、書誌学とノンフィクションの分野において多大な影響を与えました。彼の著作や活動は、日本の出版文化史においても重要な位置を占めています。

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