底倉温泉

底倉温泉



底倉温泉(そこくらおんせん)は、神奈川県足柄下郡箱根町、宮ノ下温泉の西隣に位置する温泉地です。蛇骨川沿いの深い谷に湧く蛇骨湧泉群を源泉としており、中世から隠れ湯として知られていました。江戸時代には、痔疾などに効能がある名湯として、箱根七湯の一つに数えられました。かつては複数の温泉宿がありましたが、現在は一軒のみとなっています。

歴史



底倉温泉の歴史は古く、江戸時代後期の『底倉記』には、1403年に新田義則がこの地に潜伏していたという記述があり、当時から温泉が存在したことがうかがえます。1545年には、後北条氏によって湯治中の村人への使役を禁じるお触れが出されており、温泉地としての歴史が古くから重要視されていたことがわかります。1590年の秀吉の小田原攻めの際には、伊達政宗が幽閉された場所としても知られています。秀吉は兵士を温泉で労い、村を保護するために、乱暴狼藉を禁止する命令を出したと伝えられています。

文化年間(1812年)の記録には、蛇骨沢湧泉群から沸騰点に近い弱食塩泉が湧き出ており、塩気があることが記されています。1842年の「箱根七湯図」には、萬屋、梅屋、蔦屋、仙石屋の4軒の湯宿が描かれています。これらの宿は蛇骨川沿いに並んでいましたが、1881年の大火で焼失。その後、梅屋、蔦屋、仙石屋が復興し、湯滝や高楼を備えた建物に建て替えられました。しかし、関東大震災で再び倒壊し、戦後に再建されました。戦後、蔦屋、梅屋、仙石屋は営業を再開しましたが、現在は全て閉館しています(蔦屋は2006年に別の経営者によって「つたや」として屋号が引き継がれています)。

蔦屋と梅屋



「蔦屋」は、江戸時代から続く旅館で、1890年横浜の酒商・沢田武治に売却されました。沢田は元飯野藩藩士で、戊辰戦争の戦後処理に関わった人物です。妻のきくを女将とし、旅館業を営む傍ら、医療のなかった底倉に医師を呼び、函嶺医院を開設しました。現在、この医院の大正時代の建物は日帰り温泉として利用されています。沢田の息子・鋓義は、宿の裏山に高山植物を植え「高山園」として公開し、箱根の旧跡に石碑を建てました。また、女中たちに教育を授けたり、温泉案内の冊子を客用に用意するなど、進歩的な取り組みも行いました。鋓義の息子・武太郎は植物学者として知られ、シーボルトが命名したオタクサが、お滝さんから来ていると指摘した人物です。沢田家による蔦屋は昭和末期まで続きましたが、その後経営者が変わっています。

「梅屋」は、底倉を代表する老舗旅館として栄えましたが、1962年に閉館しました。主人の鈴木牧太郎は、強羅一帯の土地を所有していました。明治時代には、仲居を他の旅館に宿泊させて勉強させるなど、従業員の教育にも熱心でした。森有礼谷崎潤一郎をはじめ、多くの著名人に愛された旅館としても知られています。

見所



蛇骨川: 温泉成分が析出してできた白い石が、蛇の骨のように見えることから名付けられました。川沿いには遊歩道があり、秋には紅葉が楽しめます。
太閤石風呂: 秀吉の小田原攻めの際、兵士たちが利用したとされる石風呂です。天然の洞窟を利用した蒸気風呂で、現在は石碑のみを見学できます。毎年夏には、「太閤ひょうたん祭り」が開催されています。
新田塚: 新田義則の墓です。蛇骨川沿いの脇道を入った場所にあります。
箱根町立郷土資料館: 底倉蔦屋旅館の沢田家が所有していた『七湯の枝折』を所蔵しています。

アクセス



小田急箱根鉄道線(箱根登山電車)宮ノ下駅下車徒歩約10分。

参考文献



『相州函根底倉鉱泉誌』仙石屋丈助、1894年

関連項目



温泉
温泉
外湯
温泉番付
日本の[[温泉地一覧]]
箱根温泉
温泉

外部リンク



幕末期の底倉[[温泉]](https://www.google.com/url?q=https://dl.ndl.go.jp/view/pid/10514851&sa=D&source=docs&ust=1702040080390936&usg=AOvVaw3k8rXJc2w22m6Hw0jI6t6e)
幕末期の底倉[[温泉]](https://www.google.com/url?q=https://dl.ndl.go.jp/view/pid/10514852&sa=D&source=docs&ust=1702040080390936&usg=AOvVaw1Tq1i1nI8U-yX27sW0t-eT)
幕末期の底倉[[温泉]](https://www.google.com/url?q=https://dl.ndl.go.jp/view/pid/10514853&sa=D&source=docs&ust=1702040080390936&usg=AOvVaw1w6586l8b1n1_G8l58Gg0U)
底倉温泉の古絵はがき)

もう一度検索

【記事の利用について】

タイトルと記事文章は、記事のあるページにリンクを張っていただければ、無料で利用できます。
※画像は、利用できませんのでご注意ください。

【リンクついて】

リンクフリーです。