廃兵院

廃兵院の歴史と役割

廃兵院（はいへいいん）は、戦争や公務によって負傷したり、病気を患った軍人に対し、恩給を支給し、その功績を称えるために設けられた特別な施設です。特に、戦傷を負った兵士たちが直面した社会的な課題を解決するため、政府はその重要性を認識し、様々な施策を講じていきました。

日本における廃兵院の設立

日露戦争の激闘の中で、数万人の負傷兵が日本に帰還しました。特に、身体機能を損なったため、一般的な就労が難しくなった兵士に対する適切な扱いが大きな問題となりました。そこで、政府は1906年4月に「廃兵院法」を公布し、同年9月にその施行を開始しました。この法律は、フランスの廃兵院などの先例を参考にし、充実した体制を整えるための第一歩となりました。

初期の廃兵院は東京の渋谷分院の一部を流用したものでしたが、1907年2月には新たに豊多摩郡に移転し、その後も1908年には巣鴨町に移設されました。このように、廃兵院は急速に全国に広がっていくこととなります。

第一次世界大戦への参戦を経て、廃兵院は拡張されていき、1934年には「傷兵院法」が成立。その結果、廃兵院は「傷兵院」と改称され、日中戦争の勃発によって新たな地区における設置が進められました。厚生省が設立されたのは1938年のことで、これに伴い傷兵院は厚生省の外局である傷兵保護院の管理下に置かれることとなります。

収容基準と生活環境

廃兵院の収容基準は、重度の傷を負った者、すなわち両眼を失った者や二肢を失った者、一部の肢の機能を喪失した者などでした。また、これらの基準に準じた者たちも対象となりました。収容者には個室が与えられ、日常生活は自由で、必要な医療が提供されました。軽傷者で希望する人には、絵画や彫刻などの手芸に従事させたり、兵器廠などへの通勤も許可されることがありました。

家族のためには、愛国婦人会と連携して家族舎が設けられ、収容者側の生活改善が図られました。設立当初は収容者の貧困状態が入院条件でしたが、後にこの要件は廃止され、より重傷者向けの機能に特化することができるようになりました。

廃兵院の国際的な背景

日本の廃兵院と同様の施設は、海外にも見られます。フランスの「オテル・デ・ザンヴァリッド」や、イギリスにおけるグリニッジ病院などは、疾病や傷害を負った軍人に対する支援の場として広く知られています。アメリカでは「アメリカ傷痍軍人会」があるように、各国で戦争による傷病者を支えるための取り組みが行われています。

終焉とその後の影響

第二次世界大戦を経た後、廃兵院は国立病院や療養所へとその役割を引き継ぎました。現在、元廃兵院の一部は国立病院機構が管理しており、引き続き軍人やその家族のための支援が行われています。歴史を振り返ると、廃兵院は傷痍軍人のための重要な支えとなり、また日本の社会の変化に寄与した施設としても評価されるべき存在と言えるでしょう。

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