廣崎裕哉

廣崎裕哉の陶芸とその生涯

廣崎裕哉（ひろさき ゆうや、別称「ゆうさい」）は、1933年11月26日に東京で生まれました。父親は味噌の業界で名を馳せ、母親は家庭を支えました。大学では政経学を学んでいましたが、病気療養中に出会った陶芸作品が彼の人生を大きく変えることになります。特に、石黒宗麿や濱田庄司の作品に心を動かされ、その後の人生を陶芸家として歩むきっかけとなりました。

陶芸の道を志すことを決めた廣崎は、益子へ通い続け、当時盛り上がっていた「民芸の里」としての雰囲気に触発され、益子焼を学ぶことを決意します。家族からは反対されましたが、彼は自らの情熱を貫き、1959年に益子に移住しました。栃木県窯業指導所での学びを経て、塚本製陶所で研究に励みます。

磁器への追求と「牙白瓷」

陶芸に従事して15年の後、40歳を迎える頃には、土による陶器から磁器への製作にシフトし始めます。特に、友人であり同業者である加守田章二との交流が、廣崎に新たなインスピレーションを与えました。加守田のシンプルな一言、「磁器でいけ」が、彼の制作への道を明確にしました。

廣崎は磁器の美しさに魅了され、独自の白磁器のスタイルを確立します。その中でも「牙白瓷（げはくじ）」と名付けた作品は、北宋の定窯の白磁を現代に再現したものとして知られ、アイボリー色がかかった独特の美しさに定評があります。また、彼の作品には、温かみと気品が感じられ、多くの陶芸ファンを魅了しました。

廣崎裕哉と文人の精神

陶芸家としての活動の他に、廣崎は俳人としても知られていました。中学・高校時代には女流俳人長谷川かな女の元で学び、将来が嘱望されていました。大学へ進学してからも作句を続け、陶芸と俳句の両方で才能を発揮しました。彼の詩的な感受性は、陶芸作品にも色濃く反映されていると評価されています。

生涯を通じて、多くの作品を残し、特に晩年には自らの選ぶ句を集めた句集『自選 一哉集』が制作されました。栃木県出身の編集者によって出版されたこの句集は、廣崎にとって非常に大切なものであり、彼の作品に対する熱い思いが込められています。病床でその句集を手にした彼は、目に力を取り戻し、感謝の言葉を述べる姿が印象的でした。

最後の時

残念ながら、2012年2月12日、腎臓がんにより彼は78歳で逝去しました。廣崎裕哉の陶芸は、今もなお多くの人々に感動を与え続けています。彼の作品は、益子焼の文化を象徴するものであり、後世に語り継がれるべき存在といえるでしょう。陶芸界での彼の業績は、陶芸の域を超え、文化や文芸の面でも人々に影響を与えてきました。このように、廣崎裕哉の生涯は、常に創造と言葉の追求によって彩られていました。

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