廣津久雄

廣津久雄九段：温厚な人柄と卓越した技で将棋界に貢献した棋士

廣津久雄九段は、1923年2月26日、福岡県福岡市に生まれ、2008年4月16日、急性腎不全のため逝去しました。棋士番号32番、花田長太郎九段門下で、昭和から平成にかけて活躍した著名な将棋棋士です。

福岡県出身ながら、昭和20年代から静岡新聞の将棋欄を担当した縁で静岡市を拠点とし、生涯の多くを静岡で過ごしました。日本将棋連盟理事として普及活動にも大きく貢献しており、その功績は広く知られています。特筆すべきは、彼の弟子たちが全員静岡県出身である点です。これは、彼が静岡を拠点に活動し、地元の将棋界育成に尽力したことを示しています。

廣津九段は、その温厚な人柄と、将棋に対する深い愛情で知られていました。盤上では、居飛車党として知られ、その堅実な棋風で多くのファンを魅了しました。大山康晴名人に「振り飛車をやったらどうだね？振り飛車は楽しいよ」と勧められたこともありましたが、彼は生涯、居飛車にこだわり続けました。

彼の隠れた才能は、驚くべき駒積み技術です。NHKの番組「私の秘密」に出演し、歩兵を逆さに立てた上に他の駒を積み重ね、合計40枚もの駒を落とすことなく積み上げる技を披露して、大きな話題となりました。このエピソードは、彼の几帳面さと、将棋に対する並々ならぬ情熱を象徴するものです。

棋士としての経歴も輝かしいものです。1936年に入門し、1939年には初段、1943年には四段となってプロ入りを果たします。その後も順調に昇段を重ね、1985年には九段に昇段。八段昇段後250勝という偉業を達成しました。1988年に引退するまで、第一線で活躍し続けました。

主な成績としては、B級選抜トーナメント優勝1回（第5回）、最強者決定戦優勝1回（第3回）、その他2回の優勝など、合計4回の優勝を誇ります。1988年度には、東京将棋記者会賞を受賞するなど、数々の賞を受賞しました。また、1982年には現役勤続40年、1986年には藍綬褒章、1997年には勲五等双光旭日章を受章するなど、その功績は高く評価されています。

廣津久雄九段は、棋士としてだけでなく、将棋界の普及にも大きく貢献した人物でした。彼の温厚な人柄、卓越した技量、そして地元への深い愛情は、多くの将棋ファンに深く刻まれています。彼の功績は、これからも将棋界に語り継がれていくことでしょう。

昇段履歴は以下の通りです。
1936年：入門
1939年：初段
1943年4月1日：四段（プロ入り）
1947年5月10日：五段（順位戦C級下位）
1948年4月1日：六段（順位戦C級上位）
1951年4月1日：七段（順位戦B級昇級）
1961年4月1日：八段（順位戦A級昇級）
1985年6月18日：九段（勝数規定／八段昇段後公式戦250勝）
* 1988年4月1日：引退

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