建部賢明

建部賢明（たけべ かたあきら）は、万治4年1月26日（1661年2月25日）に生まれ、正徳6年2月21日（1716年3月14日）に没した、江戸時代前期から中期にかけての和算家です。

彼は、延宝4年（1676年）に弟の建部賢弘とともに、当時高名な数学者であった関孝和に入門し、和算を本格的に学び始めました。関孝和の指導の下、兄弟で切磋琢磨し、数学の知識と技術を深めていったと考えられます。

建部賢明の業績として最も特筆すべきは、関孝和、建部賢弘とともに編纂に携わった『大成算経』です。この書は、天和3年（1683年）に編纂が開始され、28年もの歳月をかけて宝永7年（1710年）に完成した、当時の数学の集大成ともいえる大著です。『大成算経』は、それまでの和算の成果を集約し、新たな数学的理論や解法を提示しており、日本の数学史において非常に重要な位置を占めています。この編纂作業に中心的な役割を果たした賢明の数学への情熱と卓越した能力が窺えます。

また、建部賢明は、数学に関する著作の他に、『建部氏伝記』や『大系図評判遮中抄』などの著作も残しています。『大系図評判遮中抄』は、当時流布していた『大系図』が沢田源内の偽作であると指摘し、佐々木六角の系図の誤りを詳細に考証したものです。この著作から、彼の数学的な知識だけでなく、歴史や系譜に対する深い関心と鋭い洞察力も持ち合わせていたことがわかります。

建部賢明は、和算家としてだけでなく、歴史家、考証家としての側面も持ち合わせていた人物でした。彼の業績は、日本の数学史、文化史において重要な意味を持ち、後世に大きな影響を与えています。

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