廿楽順治

廿楽 順治（つづら じゅんじ）は、1960年に東京都墨田区押上で生まれた日本の詩人です。現在は神奈川県横須賀市を拠点に活動しています。

経歴

廿楽順治は、東京都立墨田川高等学校を経て、横浜市立大学国文学科を卒業しました。大学在学中に文芸誌「現代詩手帖」への投稿活動を開始しますが、一時的に詩作から離れる期間がありました。しかし、四十歳を過ぎた頃、再び詩への情熱を燃やし、本格的に創作活動を再開します。この再開後の活動が実を結び、2005年には若手詩人の登竜門として知られる第43回現代詩手帖賞を受賞し、詩壇での存在感を確立しました。翌2006年には、詩集『すみだがわ』が第11回中原中也賞の最終候補作に選ばれ、評価を高めました。そして、2012年には詩集『化車』によって第62回H氏賞を受賞し、その功績が広く認められることとなりました。

詩人としての活動は多岐にわたり、詩誌「ガーネット」「生き事」の同人として創作発表の場を持ちながら、同人誌『八景』の発行人としても活動を牽引しています。また、地域との繋がりも深く、横浜詩人会の会員でもあります。インターネットを活用した活動も行っており、PDF詩誌『四囲』の発行人としても新たな形式での詩の普及に努めています。

作風

廿楽順治の詩の最も顕著な特徴の一つは、その独特の言葉遣いにあります。育った墨田区押上という下町の環境で培われた、日常的で生き生きとした響きを持つ言葉、いわゆる下町言葉を作品の中に大胆に取り入れています。この親しみやすくも力強い語彙は、読者に新鮮でリアルな印象を与えます。

また、詩の視覚的な表現にも強いこだわりを見せます。特に、詩の各行の末尾を右側で揃える「下揃え」と呼ばれる独特のレイアウトを好んで用いることが挙げられます。これは、詩人・会田綱雄の作品から影響を受けたスタイルとされており、言葉のリズム感と視覚的な構造が一体となった、独自の表現世界を構築しています。このようなレイアウトは、言葉の意味内容だけでなく、詩全体が持つ佇まいや雰囲気を形作る上で重要な役割を果たしています。

さらに、他の芸術分野との交流にも積極的で、版画家の宇田川新聞氏との共同制作による作品も発表しています。これにより、詩と版画という異なる表現形式が融合した、多角的な作品世界を展開しています。

著書

主な詩集には以下のものがあります。

『すみだがわ』（思潮社、2005年10月）
『たかくおよぐや』（思潮社、2007年10月）
『化車』（思潮社、2011年）
『人名』（思潮社、2013年9月）
『怪獣』（私家版、2016年5月）
『ハンバーグ研究』（私家版、2016年6月）

これらの著作を通じて、廿楽順治は日本の現代詩壇において独自の世界観と表現方法を持つ詩人として確固たる地位を築いています。特に、地域に根差した言葉の力を信じ、伝統的な詩の形式にとらわれない自由な表現を追求する姿勢は、多くの読者や後続の詩人たちに影響を与えています。

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