弓弦羽神社

弓弦羽神社：歴史と信仰、そして現代の祈りが交差する神戸の神社

兵庫県神戸市東灘区御影郡家にある弓弦羽神社は、古くから地元の人々に親しまれる神社です。その歴史は深く、神功皇后の伝説や灘の酒造文化、そして近年のフィギュアスケート選手・羽生結弦選手への熱い祈願など、様々な要素が絡み合い、現代に続く信仰の場となっています。

由緒と歴史：神功皇后の祈願から始まる物語

社伝によれば、神功皇后が三韓征伐から帰還する際、この地で弓矢と甲冑を奉納し、熊野三山に戦勝祈願を行ったと伝えられています。この故事にちなみ、神社背後の山は「弓弦羽岳」と呼ばれ、後に「六甲山」の字が当てられるようになりました。

延暦年間（782年～805年）には神領地となり、嘉祥2年（849年）には社殿が造営され、遷座されました。平安時代中期以降は、熊野信仰の隆盛とともに、広く崇敬を集めるようになりました。

灘の酒造文化との深いつながり

弓弦羽神社は、日本酒の名産地として知られる灘五郷に位置しています。そのため、古くから多くの酒造家が氏子となり、神社は地域の繁栄と深く関わってきました。現在でも、新年の際には地元の酒蔵から奉納された樽酒が振る舞われたり、醸造祈願祭が執り行われたりと、酒造業との繋がりは深く、神社の賑わいの一つとなっています。菊正宗、白鶴、剣菱といった有名酒蔵も、この神社にゆかりがあります。

阪神・淡路大震災と復興：祈りと新たな芸術

1995年の阪神・淡路大震災では、東灘区は甚大な被害を受けました。弓弦羽神社も社務所、手水舎、絵馬堂などが全壊するなど大きな被害を受けました。多くの氏子も犠牲となり、神社参道の入り口には慰霊碑が建立されています。

震災からの復興を祈念し、1995年11月には現代美術家・八木マリヨ氏の提唱により、「神戸ルーツ」と題したパブリックアートが制作されました。全国から集められた一万着の古着を縄にして、拝殿前に高さ8mの大縄が立てられ、翌年の震災復興祈願祭で「鎮魂の送り火」として燃やされました。この出来事は、地域住民の強い復興への意志と、神社が果たす役割を象徴する出来事となりました。

スポーツと芸術の聖地：八咫烏と羽生結弦

弓弦羽神社は、八咫烏をシンボルとしています。これは、日本サッカー協会のシンボルとも共通しており、境内には御影石製のサッカーボールが設置されています。また、神戸を本拠地とする女子サッカークラブINAC神戸レオネッサがシーズン前に必勝祈願に訪れることでも知られています。さらに、神社の名前に「弓」が付くことから、弓道家やヴァイオリン愛好家も訪れるなど、多様な人々にとっての聖地となっています。

特に近年注目されているのは、フィギュアスケート選手・羽生結弦選手との繋がりです。羽生選手が2011年に参拝したことをきっかけに、多くのファンが彼の活躍を祈願する絵馬を奉納するようになりました。ソチオリンピックでの金メダル獲得後には、参拝者が急増し、現在では絵馬の7割近くが羽生選手への応援や必勝祈願のものとなっています。そのため、弓弦羽神社は羽生結弦ファンの聖地とも呼ばれるようになっています。

アクセス

阪急神戸線 御影駅より徒歩約5分
JR神戸線（東海道本線） 住吉駅より徒歩約10分
* 阪神本線 御影駅より徒歩約15分

弓弦羽神社は、歴史と信仰、そして現代の祈りが交差する、魅力あふれる神社です。神戸を訪れた際には、ぜひ足を運んでみてください。

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